目次
- 1 営業AIエージェントとは?
- 2 営業AIエージェントの主な活用シーン6選
- 2.1 営業ロールプレイ/トレーニング
- 2.2 アポ獲得
- 2.3 営業資料や準備ドキュメントの自動生成
- 2.4 オンライン商談支援
- 2.5 顧客フォロー・カスタマーサクセス
- 2.6 営業日報・レポートの自動化など
- 3 実際の営業AIエージェントを活用した2つの事例
- 3.1 事例①:Salesforce「Agentforce」で“育成したくてもできない”営業現場に変化が生まれた(IT企業A社)
- 3.2 事例②:「アポドリ」で“人手不足で動けない”営業体制でもアポ獲得が月4件→18件に(製造業向けSaaS企業B社)
- 4 営業AIエージェント導入を成功させるポイント
- 5 さいごに
営業力の底上げが求められる今、「営業AIエージェント」に注目が集まっています。
ChatGPTなど生成AIの登場以降、「AIを使う」から「AIに任せる」へと、営業現場にもパラダイムシフトが起き始めました。
営業AIエージェントとは、単なるチャットボットではありません。
顧客の情報収集からアポイント取得、商談サポート、カスタマーサクセスまで──従来人が担っていた一連の営業タスクを、AIが自律的に思考・行動しながら代替/支援してくれる仕組みです。
「属人化した営業から脱却したい」
「人手不足でも成果を上げられる営業体制をつくりたい」
「営業代行よりコスパの良い仕組みが欲しい」
こうした課題を抱える経営者や営業マネージャーにとって、営業AIエージェントは強力な選択肢となり得ます。
本記事では、営業AIエージェントの基本から活用シーン、実例、導入効果、メリット・デメリット、導入成功のポイントまでを網羅的に解説します。
導入を検討している方も、情報収集中の方も、ぜひ最後までご覧ください。
営業AIエージェントとは?

営業AIエージェントとは、営業に関わる一連の業務を、思考と行動をともなって自律的に遂行するAIツールです。
従来のAIが「質問に答えるだけ」「特定の処理を自動化するだけ」といった単機能型だったのに対し、AIエージェントは情報収集・判断・実行を組み合わせて“仕事”を任せられる存在として注目されています。
このような変化は、単なる業務効率化ではなく、営業の在り方そのものを変えるパラダイムシフトともいえます。
これまで「人がAIを使う」時代だったのが、「AIに任せ、人が判断や創造に集中する」時代へと移行しつつあるのです。
ただし「AIエージェント」という言葉にはまだ明確な定義がなく、企業やサービス提供者によって解釈が異なるのが実情です。そのため、導入にあたっては机上の議論よりも、まずは小さくプロトタイプを試してみるという姿勢が重要視されています。
営業AIエージェントは、営業の属人化や人手不足といった課題の解決策として、今後ますます注目される領域です。
営業AIエージェントの主な活用シーン6選

営業AIエージェントは、「AIに任せられる領域」が広がることで、これまで人手や属人的な対応に頼っていた営業活動を根本から変えつつあります。
ここでは、営業現場で実際に導入され始めている代表的な活用シーンを6つに分けて紹介します。
自社でどの業務をAIに任せられるのか、想像しながら読み進めてみてください。
営業ロールプレイ/トレーニング
営業AIエージェントは、実践的な営業ロールプレイの“相手役”として活用することができます。
たとえば、セールスフォースのAgentforceのようなツールでは、AIが顧客を模したロールを担い、製品説明やヒアリング、反論対応といった会話の練習が可能です。
AIは事前に設定したシナリオや商品情報を踏まえて対応するため、リアルに近い顧客の反応を再現でき、実際の商談を想定したトレーニングが行えます。
また、AI相手であれば気を遣う必要もなく、時間や場所を問わず、何度でも繰り返し練習ができる点も大きなメリットです。
さらに、会話内容に対してフィードバックや改善点の提示も自動で行ってくれるため、属人的な「感覚頼りのOJT」から脱却し、効率的に営業力を磨く環境を整えることができます。
「営業に自信がない」「反論に弱い」といった課題を抱えるメンバーの育成に、営業AIエージェントは非常に有効です。
アポ獲得
営業活動の中でも特に工数がかかり、成果にばらつきが出やすいのが「アポ獲得」のフェーズです。
営業AIエージェントを活用すれば、このアポ獲得業務そのものを丸ごとAIに任せることができます。
たとえば、アルゴマティック社の「アポドリ」では、まずAIが公開情報(IR資料・プレスリリース・SNSなど)を収集・分析し、アプローチすべき企業やその課題仮説を導き出します。
次に、社内のどの部署・誰にアプローチすべきかを特定し、企業ごとにパーソナライズされた提案文をAIが自動生成・送信。これにより、人間が時間をかけていたリスト精査や文面作成の負担が大幅に削減されます。
人手では到底実現できない“質と量の両立”を可能にするのが、営業AIエージェントによるアポ獲得支援の真価です。
営業資料や準備ドキュメントの自動生成
提案書や事例資料など、営業に必要な準備ドキュメントの作成には、想像以上に時間と労力がかかります。
とくに、受注率を高めるための顧客ごとのカスタマイズ提案は、属人化やリソース不足の壁に直面しやすい領域です。
営業AIエージェントを活用すれば、ターゲット企業の情報や提案の方向性を入力するだけで、顧客に最適化された資料を高速・高品質に生成することが可能になります。
たとえば、同業他社の事例を組み込んだ提案スライドや、顧客の業界課題にマッチした導入効果シミュレーションなども、テンプレートではなく“その企業のために書かれた”提案として出力されます。
これにより、営業担当者は作業時間を大幅に削減できるだけでなく、提案の精度と説得力を標準化・底上げすることが可能になります。
また、資料の準備にかかる時間が短縮されることで、より多くの商談に注力できる営業体制の構築にもつながります。
オンライン商談支援
オンライン商談が主流となった現在、その場の反応速度や提案力が受注率に直結するようになっています。
営業AIエージェントは、商談の場にも“同席”し、リアルタイムで営業担当者を支援する存在として活躍します。
あらかじめ収集した企業情報や顧客の興味関心をもとに、会話中に出てきたニーズやキーワードに反応し、適切な資料や事例、提案内容をその場でサジェスト。
また、議事録の自動作成や、次回アクションのリマインド・提案まで一貫して行うことができます。
営業担当者が話すことに集中している間、裏側で“もう一人の自分”が補完してくれるような感覚で活用できるのが大きな特徴です。
対応スピードと提案の的確さを両立させることで、商談の質を引き上げるだけでなく、人材によるパフォーマンスのばらつきを抑える役割も期待できます。
経験の浅いメンバーでも、AIの支援があれば自信を持って提案に臨めるようになるでしょう。
顧客フォロー・カスタマーサクセス
受注で終わらないのが、現代の営業スタイル。継続率の向上やアップセル・クロスセルの機会創出には、契約後のフォロー体制が重要です。
営業AIエージェントは、カスタマーサクセス領域においても活用が進んでいます。
たとえば、サービス利用状況やログイン履歴、問い合わせ傾向などのデータを常時モニタリングし、顧客がつまずいている兆候や解約リスクをAIが自動で検知。
「問い合わせが来る前」に、AIが先回りでフォローアップメールを送る、追加マニュアルを提案するなど、能動的な対応を自動で行うことが可能です。
もちろん、AIでの対応が難しいケースでは、人間の担当者へシームレスに引き継ぐフローも設計できるため、「自動=放置」にならない安心設計が可能です。
これにより、手厚いサポートが必要な顧客にも対応しやすくなり、解約率の低下やLTV(顧客生涯価値)の向上にもつながります。
営業日報・レポートの自動化など
営業活動の中で地味に負担が大きく、なおかつ軽視できないのが、日報やレポートの作成業務です。
商談後に記録を残す作業は、つい後回しにされがちで、入力漏れ・属人化・情報共有の遅れといった課題が頻発します。
営業AIエージェントは、商談の音声やチャットログ、CRM内の活動履歴などを自動で分析し、日報や週次・月次の営業レポートを自動生成することができます。
これにより、担当者は入力に時間を取られることなく、記録業務から解放されるだけでなく、より正確で一貫性のある情報管理が可能になります。
さらに、AIがレポート内容を要約したり、次回アクションの提案を添えて出力することもできるため、上司やマネージャーも現場の状況をタイムリーに把握できるようになります。
情報共有の速度と質が向上すれば、社内のナレッジが蓄積され、営業戦略の改善サイクルも回しやすくなります。
実際の営業AIエージェントを活用した2つの事例

事例①:Salesforce「Agentforce」で“育成したくてもできない”営業現場に変化が生まれた(IT企業A社)
ITソリューションを提供するA社では、新卒採用を強化し始めたものの、若手の育成がうまく回っていないという課題を抱えていました。
「商談には同行しているのに、提案力がなかなか伸びない」
「中間層のプレイングマネージャーが、業務と育成の両立で疲弊している」
経営層も“育てたい気持ちはある”一方で、現場の限界を痛感していました。
そんなとき導入したのが、SalesforceのAgentforceです。

自社の営業トークや提案資料をもとに、AIが顧客役としてロールプレイに対応。若手社員は、いつでも好きなタイミングで練習ができ、AIから「話の構成力」「伝わりやすさ」「反論対応力」などの項目別にフィードバックが返ってきます。
この仕組みによって、「育成の初期負荷をAIが引き受ける」状態ができあがり、マネージャーは“育成の核だけを押さえればいい”という働き方に変化。
「一から十まで教えなくても、AIが土台をつくってくれるのは助かる」
「現場の育成疲れが減って、マネージャーにも余裕が生まれた」
という声も出てきました。
導入後は、若手のロープレ参加率が100%に回復し、提案成功率も1.5倍に向上。
育成工数を減らしながら、成果は上げるという理想的な循環が生まれつつあります。
事例②:「アポドリ」で“人手不足で動けない”営業体制でもアポ獲得が月4件→18件に(製造業向けSaaS企業B社)
製造業向けに業務改善SaaSを提供しているB社では、「アポさえ取れれば受注率は高いが、そもそも新規開拓のリソースが足りない」という課題を長年抱えていました。
営業チームは少数精鋭。既存顧客の対応や見込み客のクロージングに追われ、新規へのアウトバウンドは“やりたいけど後回し”という状況が常態化していたのです。
経営層も、「顧客候補の情報はネット上にたくさんあるのに、それを拾って動く余裕がないのがもったいない」と感じていました。
そこで導入したのが、AIによるアポ獲得支援ツール「アポドリ」です。

企業リストをAIに渡すだけで、アポドリがIR資料やプレスリリース、SNSの発信内容をもとに、
「今、どんな課題を抱えていそうか」「どの部署・誰にアプローチすべきか」まで分析。
さらに、その企業専用にカスタマイズされたメール文面を自動生成し、ターゲットに直接アプローチしてくれます。
送ったメールに対しては、
「うちの事情をここまで読み込んでくれるのは、ちょっと驚いた」
「うちの社員より、会社のことをよく見てるかも」
といった反応もあり、これまで全く返答がなかった企業からの返信が相次ぎました。
結果、導入前は月4件程度だった新規アポが、導入3ヶ月目には月18件に到達。
商談化率・受注率ともに向上し、「これは人力だけでは出せなかった数字」と経営陣も手応えを感じています。
営業AIエージェント導入を成功させるポイント

営業にAIエージェントを導入して成果を出している企業に共通するのは、「今ある営業業務にAIを“付け足す”」のではなく、“そもそも人がやらなくていい業務は何か?”から逆算して設計していることです。

上図は、アポ獲得AI「アポドリ」を開発したAlgomatic池田社長による営業業務の再設計フローです。
注目すべきは、“どの業務が顧客と直接話すべき業務なのか”を線引きし、「それ以外はAIエージェントに任せる前提でプロセスを作り変えている」点です。
具体的には、以下のような流れがAIによって自動化されています:
- Web情報の調査
- 顧客の興味・行動ログの自動収集
- ナレッジの整理・加工
- 商談相手に合わせた提案資料の作成
つまり、営業担当が本来時間をかけずに済むべき「情報収集」「準備」「記録」「ナレッジ共有」といった間接業務をAIに任せることで、“話す”という営業の本質に集中できる構造が実現されているのです。
このアプローチによって、営業担当者は業務の8割を「顧客と対話すること」に使えるようになると図でも示されています。
スタートアップ経営においては、人手もリソースも限られている中で、営業の価値が最も発揮される「商談」や「信頼構築」に時間を集中させる設計が不可欠です。
そのためには、「何を自動化するか」よりもまず、「何を人がやらない構造にするか」という視点が必要です。
営業AIエージェントの導入とは、単なるツール導入ではなく、業務全体を“AIを前提とした構造”に最適化する経営判断なのです。
さいごに
「営業を強化したいけど、人手も時間も足りない」
「育成したいけど、現場がいっぱいいっぱい」
そんな声は、どの成長企業からも聞こえてきます。
営業AIエージェントは、単に作業を減らすためのツールではありません。
“人がやらなくてもいい業務”を見極め、営業がもっと価値ある時間に集中できる環境をつくることが、本質的な導入の目的です。
全てを一気に変える必要はありません。まずは小さく、ひとつの業務から。
AIを前提に業務を見直すことで、少ない人数でも成果を出せる強い営業組織が、きっと実現できます。