目次
- 1 パイプラインとは
- 2 パイプライン管理とは
- 3 パイプライン管理をすることのメリット
- 4 パイプライン管理実践方法
- 4.1 営業プロセスの細分化と定義づけ
- 4.2 営業プロセス進行の基準を決める
- 4.3 細分化したプロセスの社数と転換率の可視化
- 4.4 SFAなどのツールの導入とデータ入力の徹底
- 5 パイプラインを設計しただけで終わらない
- 5.1 プロセスを決める際は見込み顧客の行動を中心に考える
- 5.2 収益目標をしっかりと設定し、その達成に向けて逆算
- 5.3 営業プロセスを進行する見込み顧客の特徴を特定する
- 6 パイプライン管理をするときの注意点
- 6.1 パイプラインの中の見込み顧客の数を常に意識する
- 6.2 見込み顧客へのフォローの徹底
- 6.3 パイプライン内を常にクリーンに保つ
- 6.4 パイプラインを常に改良し続ける
- 7 パイプライン管理を補助するツール
- 8 まとめ
ビジネスの場では、様々な言葉が一般的に使われている意味とは違う意味で利用されます。
その中でも「パイプライン」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか?
今回はこの「パイプライン」について解説し、パイプラインを構築し管理を始める方法、注意点、パイプライン管理のためのツールについて解説していきたいと思います。
パイプラインとは
マーケティングにおけるパイプラインとは、見込み顧客を獲得してから、その見込み顧客が商品やサービスを受注するまでの段階を営業プロセスとして定義し、見込み顧客がその営業プロセスを順番に移動していく様子を時系列で可視化させたもののこといいます。
例えば、
「見込み顧客へのアプローチ」
→「インサイドセールスがヒアリング」
→「アポ獲得」
→「具体的な見積などの提示」
→「受注」
といった流れのことです。
よくある勘違いに、パイプラインと売上予測を混同するということがありますが、この二つは取り扱う情報と目的に違いがあります。
取り扱う情報の違いとは、パイプラインでは新規案件から商談にある顧客まで、営業プロセスにある見込み顧客全ての情報を取り扱います。
しかし、売上予測では一定の期間の中で、成約に至る可能性が高い顧客の情報のみを取り扱います。
そして目的の違いとは、パイプラインでは見込み顧客がどのプロセスにいるかを可視化することで、よりよいアクションを起こすために利用されます。
一方、売上予測は自社が立てた目標との違いを確認し、目標に近づけるための指標として利用されます。
営業プロセスは、業界や取り扱う商品によって異なるため、どこの企業にも当てはまるような万能なパイプラインは存在しません。
しかし、どんな商品やサービスを取り扱っていても、受注に至るまでの過程が存在するため、パイプラインを構築することに意味がない企業というのは存在しないと考えられます。
パイプライン管理とは
パイプライン管理とは、「1.パイプラインとは」で解説したように営業プロセスを定義・可視化し、それぞれのプロセスを分析することで、ボトルネックとなっている部分を発見・改善していく、というマネジメント方法のことを指します。
上の項で出したプロセスの例である、
「見込み顧客へのアプローチ」
→「インサイドセールスがヒアリング」
→「アポ獲得」
→「具体的な見積などの提示」
→「受注」
で考えてみると、どのプロセスで見込み顧客たちが離脱しているのかということを確認し、そこを改善するための策を考えるといったことがパイプライン管理になります。
また、この営業プロセスを営業担当者ごとに見えるようにすることで、他の営業担当者と比べてどこが個人のボトルネックとなっているかが分かるため、どこを改善すれば成約率向上に繋がるかが分かるようになります。
他にもパイプライン管理をすることのメリットはいくつかあるため、次の章でご紹介します。
パイプライン管理をすることのメリット
パイプライン管理をすることのメリットとしては、大きく2つ挙げられます。
一つ目のメリットは、営業業務の効率化と目標達成へのアクションプランが立てやすくなるということです。
パイプライン管理をすることで、見込み顧客が営業プロセスのどの段階にいるかを簡単に確認できるようになるため、それぞれの見込み顧客に対して取るべきアクションをすぐに取れるようになります。
また、アクションプランを立てる際にも、見込み顧客がどの営業プロセスにいるか確認しながら行うことで、より正確に素早く作成できるようになります。
二つ目のメリットは、営業マネージャーがそれぞれの担当者に適切な指導や指示を出せるということです。
パイプラインは、一定期間の情報のみを確認することでその期間の売上予測を立てることもできます。
そのため、営業マネージャーはそれを確認しながらそれぞれの担当者に対して、目標達成のためにどのようなアクションを取るべきか、より具体的な指示を出せるようになります。
また、営業プロセスが可視化されるため、ボトルネックとなっている部分を具体的に提示しながら指導することもできるようになります。
パイプライン管理実践方法
ここでは、パイプライン管理を実践するためのステップを4つに分けてご紹介したいと思います。
営業プロセスの細分化と定義づけ
まずは自社の営業プロセスを細分化し、それぞれのプロセスの定義を決め、パイプラインを設計していきます。
上の項で説明した、
「見込み顧客へのアプローチ」→「インサイドセールスがヒアリング」→「アポ獲得」→「具体的な見積などの提示」→「受注」
などがこれにあたります。
この段階で詰まってしまう場合は、顧客の行動をよく観察して顧客の流れを見つけることで、見込み顧客を獲得してから契約するまでのプロセスを細分化しやすくできます。
営業プロセス進行の基準を決める
パイプラインの設計が終わったら、次は見込み顧客がそのプロセスを進行する基準を決めていきます。
例えば、
「見込み顧客からの資料請求があった」
というアクションは、
「見込み顧客へのアプローチ」→「インサイドセールスがヒアリング」
というプロセス進行の基準であると考えられます。
また、
「インサイドセールスが、見込み顧客の具体的なニーズを確認した」
という場合は、
「インサイドセールスがヒアリング」→「アポ獲得」
というプロセス進行の基準であると考えられます。
細分化したプロセスの社数と転換率の可視化
例として何度も挙げている営業プロセスを利用して説明すると、
「見込み顧客へのアプローチ(100社/月)」→10%が次の段階へ
「インサイドセールスがヒアリング(10社/月)」→30%が次の段階へ
「アポ獲得(3社/月)」→70%が次の段階へ
「具体的な見積などの提示(2社/月)」→80%が次の段階へ
「受注(1社/月)」
などのような形です。
このような形で、各プロセスの数字を具体的に算出し可視化することで、全体の営業プロセスの流れを確認しながら、どこがボトルネックとなっているのかを確認できます。
SFAなどのツールの導入とデータ入力の徹底
ここまで作ってきた営業プロセスを、SFAなどのマーケティングツールを利用して入力し、データとして蓄積していきます。
SFAは「営業支援システム」と呼ばれ、営業活動や顧客情報の管理をしてくれるツールになります。
パイプラインを管理するツールはSFAだけではなく、様々なものがありますが、一般的にはSFAを利用する企業がほとんどです。
SFAについてより詳しく知りたい方は下の記事をご覧ください!
※「CRM・MA・SFA」3つのツールの違いとは?
このSFAなどのツールを導入し、入力を徹底しデータを蓄積するという作業が非常に重要となります。
これができなければ正確な予測が立てられない上、改善点も見つかりづらいため、パイプライン管理をする上では必須の作業となります。
SFAなどのマーケティングツールを導入することのメリットは、パイプライン管理ができる以外にも多くあるため、パイプライン管理をしたいと思ったら同時にツールについても調べることをおすすめします。
この記事の「7.パイプライン管理を補助するツール」では、SFA以外のパイプライン管理ツールとして「HubSpot」を紹介していますので、ぜひご覧いただければと思います。
パイプラインを設計しただけで終わらない
当然ですが、パイプラインを設計するだけでは何の効果も得られません。
データを蓄積し、分析を行い、それをもとにパイプラインの管理をしていかなければ営業の効率化も改善も図れません。
パイプラインの設計だけで終わらないために、設計の段階で考えておくべきこと、そして設計後どのように利用していくかを3つに分けてご紹介します。
プロセスを決める際は見込み顧客の行動を中心に考える
パイプラインを設計する際に、見込み顧客がどのようなプロセスを通って成約に至るのかということを考えなければなりません。
よくある間違いとして、営業担当者がどのようなアクションを取るかを中心に考えてプロセスを考えてしまうということがあります。
営業担当者のアクションを中心にプロセスを考えてしまえば、見込み顧客が成約までにたどるプロセスとはズレたものが出来上がってしまうことがよくあります。
このズレはパイプライン管理を始めた直後に大きく影響してきます。
自分たちが設計したパイプラインと見込み顧客の行動のズレが大きければ、見込み顧客の行動予測が難しくなり、売上予測が正確に立てられなくなるためです。
このようなことが起こらないようにするためにも、プロセスを考える際は見込み顧客の行動を中心に考えていきましょう。
収益目標をしっかりと設定し、その達成に向けて逆算
当然ではありますが、収益目標がなければ自分たちのゴールがどこにあるのか分からないため、具体的に今行わなければならない改善点が見えなくなってしまいます。
そうならないためにも、まずは収益目標をしっかり設定し、その達成に向けて各プロセスにどの程度の見込み顧客・商談などの数が必要となるのか、逆算できるようにしておきましょう。
営業プロセスを進行する見込み顧客の特徴を特定する
見込み顧客が、パイプラインのそれぞれのプロセスを進行するときの共通点や特徴などを、細かく特定するよう努めます。
営業担当者がどのようなアクションを取り、そのアクションに対する見込み顧客の反応はどのようなものだったかなど、営業担当者側と見込み顧客側の両面からその特徴を検討します。
パイプライン管理をするときの注意点
パイプラインを設計し管理をすることで、営業の効率化や改善を図ることができますが、効果的に機能させるためには、いくつかの注意点を押さえておかなければなりません。
ここでは、その注意点を4つご紹介します。
パイプラインの中の見込み顧客の数を常に意識する
パイプラインの中にいる見込み顧客を、どうやって次のプロセスに進めるかばかり考えていると、パイプラインの中の見込み顧客の数が減少し、先細りになってしまいます。
そうなってしまうと、一番近い目標は達成できても、次期の目標を達成することが困難になってしまいます。
このような事態を避けるため、パイプラインを常に大きくしていくという意識を持って営業活動に取り組まなければなりません。
これは、すでにある商談のみに力をいれるのではなく、新規案件の獲得にも力を入れなければならないという意味です。
営業パイプライン内の見込み顧客の数は、先のプロセスへ進むに連れて減少していきます。
そして、営業パイプラインの後半に進むにつれて先のプロセスへ進む割合は高まっていきます。
いくら先へ進む割合が高まると言っても、母数が少なければ次のプロセスへ進む数が大きく減少してしまいます。
こういった事態を解決するためには、新規顧客を獲得する以外にありません。
見込み顧客へのフォローの徹底
見込み顧客へのフォローが徹底されていなければ、営業パイプラインの進行率は低下してしまいます。
そのため、見込み顧客へのフォローのタイミングや連絡方法、頻度など、一定のパターンを作っておくことで、フォローを徹底できるような環境作りをしましょう。
例えば、
「もし見込み顧客側から問い合わせがあれば、その問い合わせから15分以内にコールをする」
「電話で追客する際に、電話が繋がらなければ対応可能な時間などを聞き出し、それに合わせて追客を行う」
「全ての見込み顧客に対して、メール・電話・SNSなどの手段で、ひと月に最低でも10回はコンタクトを図る」
などが考えられます。
これらのコンタクトの際に意識すべきことは、できるだけ毎回新しい情報や資料を提供するべきである、ということです。
これにより、見込み顧客の興味を保つことができるようになります。
また、フォローを徹底するためのパターンを作成しておくことで、過去のデータから次のプロセスへ進む見込みがないと判断するタイミングが分かるようになります。
見込みがないと判断された顧客をパイプラインから削除することで、次の項で説明する「パイプライン内を常にクリーンに保つ」ということができます。
パイプライン内を常にクリーンに保つ
パイプラインを活用して正確な売上予測をするには、パイプラインの中を常にクリーンに保っておく必要があります。
これがどういうことかというと、6-2でも少しだけ触れましたが、見込みのない顧客をパイプラインから削除するという作業が必要になる、ということです。
例えば、「具体的な見積などの提案」という段階にいる見込み顧客Aがいるとします。
この段階で見込み顧客Aへ30万円のサービスを提案しましたが、連絡が取れなくなっています。
提案書を送ってから1か月以上が経過しましたが、未だに連絡はなく成約には至っていません。
しかし、この段階に属する見込み顧客が次のプロセス(成約)へ進む確率は80%を超えているので、翌月の売上予測には30万円が計上されます。
といった風に、成約の見込みがないにもかかわらず、常に30万円の誤差が出続けることになってしまいます。
この数が増えれば増えるほど、誤差は大きくなり正確な売上予測を立てることが困難になってしまうのです。
こういった事態を防ぐためにも、パイプラインの中を常にクリーンに保っておく必要があります。
パイプラインを常に改良し続ける
企業によって適切なパイプラインの形は変わりますが、その形は日々変化します。
情報化社会となり、人々が自分自身で情報を集める時代になったことで、ニーズの細分化がどんどん進み、求められるものも日々変化します。
そのような時代の中で、一定のパイプラインの形が有効であり続けるということは考えづらく、適したものへと常に改良し続けなければなりません。
よりよいパイプラインを常に探すという意識を持って、見込み顧客たちの行動を常に確認・分析することを心掛けましょう。
パイプライン管理を補助するツール
パイプライン管理を補助するツールはたくさんあり、一般的には何かしらのSFAを利用する企業が多いと思います。
今回は無料でも充実したパイプライン管理ができ、CRMやSFA、MAとしての機能も備えた、オールインワン型のマーケティングツールである「HubSpot」の取引管理機能をご紹介したいと思います。
HubSpotの取引管理機能を利用することのメリットは、無料でも多くの機能が利用できるというところにあります。
上の図のように、現在進行中の取引を可視化でき、プロセスごとの合計金額やクローズ日が一目で分かります。
さらに、取引金額や商品項目、クローズ日などをもとに検索して一覧表示にできるなど、無料とは思えないほど様々な機能を利用できます。
また、HubSpotはオールインワン型のマーケティングツールを提供していますが、これと連携させることで入力の手間を大幅に削減できます。
それに加えて、取引管理画面から簡単に顧客情報画面やコンタクト履歴画面にジャンプできることも、業務の効率化に役立ちます。
このオールインワン型のマーケティングツールも、一部を無料で利用でき、その中でも顧客の管理などを行える「CRM機能」は大部分が無料で利用できるため、無料で顧客管理とパイプライン管理が行える優れモノとなっています。
デメリットを挙げるとすれば、データ入力をきっちりとしなければ効果は得られないというところと、より高機能な有料版があるというところが挙げられます。
データ入力に関しては基本的にどのツールを利用しても同じことが言えますが、やはりデメリットのひとつではあります。
社内の全員で入力を徹底しなければデータが集まらず、分析を行うことができないため、予測の精度が低くなってしまうため、パイプライン管理の効果をほぼ得られません。
もう一つのデメリットである、より高機能な有料版の存在ですが、先に言ってしまえば無料版でも十分な機能を備えているため、デメリットであるとは完全に言えません。
有料版にすることで、複数のパイプラインの設定や、自動化機能など様々な機能を利用できます。
これが必要となるかどうかは利用してみて初めて分かる部分もあるので、一度無料版を試してから有料版を検討すれば問題ありません。
このように無料でまずはツールの利用を始めてみることをおすすめします。
データの蓄積が一定数必要となるため、簡単にツールを変更するということは難しいかもしれませんが、HubSpotは優秀なマーケティングツールが軸となっているため、データを一元管理できるという所も大きなメリットになります。
ここまで解説してきたように、HubSpotを利用するメリットは多くあるため、パイプライン管理を検討し始めたら、HubSpotについても同時に調べてみてはいかがでしょうか。
まとめ
パイプラインを管理することで、営業の効率化と改善が行えるということを解説しました。
それと同時に、パイプラインの管理で成果を出すためには、SFAなどのツールの導入や常に改善が必要になるなど、手間となる部分も多く存在するということも解説しました。
この手間となる部分はSFAなどのツールの進化とともに、どんどん少なくなっています。
また、無料で利用できるSFAや、オールインワン型でその一部を無料で利用可能なHubSpotなどのツールもあります。
パイプライン管理の効果を得るためには、一定の期間とデータの蓄積が必要となるため、気軽に導入できるものではありません。
しかし、効果を得ることができれば、営業活動のみならずマーケティング活動にも大きな効果を発揮します。
営業やマーケティング活動を効率化したい企業や、どこがボトルネックとなっているか分からないといった企業の方は、パイプライン管理の導入を検討してみてはいかがでしょうか。