目次
- 1 Salesforce Data Cloudとは?基本概要を解説
- 1.1 Salesforce Data Cloudの重要性
- 1.2 効率的なデータの管理
- 1.3 顧客体験の向上
- 2 Salesforce Data Cloudの主要機能
- 2.1 データストリーム
- 2.2 データレイクオブジェクト(DLO)
- 2.3 データモデリング
- 2.4 ID解決
- 2.5 計算済みインサイト
- 3 Salesforce Data Cloudのエディションとライセンスの種類
- 3.1 利用可能なエディション
- 3.2 Data Cloud Provisioning(無償ライセンス)について
- 4 Salesforce Data Cloudを導入するメリットとは?
- 4.1 各Salesforce製品で管理されたデータにリアルタイムアクセス
- 4.2 Salesforce外部で管理しているデータにアクセス
- 4.3 生成AIを用いた高度なデータ分析
- 5 Salesforce Data Cloudの料金体系を詳しく解説
- 6 Salesforce Data Cloudを導入したい人が最初に取るべきステップ
- 6.1 Trailheadの特徴
- 6.2 おすすめ学習トピック
- 7 まとめ
Salesforce社が新たにリリースしたSalesforce Data Cloudというサービスをご存じでしょうか?
現在、業務のあらゆる場面でさまざまなテクノロジーが活用され、システムやアプリケーションから膨大なデータが日々収集されています。
しかし、多くの企業が以下のような課題に直面しているのではないでしょうか。
「データが各システムに分散していて、一元的な分析が難しい」
「どこにどんなデータが存在しているのかが不明で、分析に活用できるかも分からない」
こうした課題が原因で、貴重なデータを顧客分析やサービス改善に十分活かせていないケースが少なくありません。
Salesforce Data Cloudは、さまざまなシステムからリアルタイムでデータを取り込み、AIや高度な分析ツールを活用することで、こうした課題を解決するための強力なソリューションを提供します。
本記事では、Salesforce Data Cloudの基本情報や主要機能、導入によるメリットを詳しくご紹介し、このサービスが皆さまのビジネスにどのような影響を与えるのか、検討のきっかけとなる情報をお届けします。
Salesforce Data Cloudとは?基本概要を解説
Salesforce Data Cloudは、Salesforceエコシステム全体を支えるデータ貯蔵場所であり、顧客データを一元化して統合された顧客プロフィールを作成するのに役立ちます。このサービスの主な目的は、ビジネスチームがより多くの顧客データにアクセスできるようにすることで、個別化された体験を提供できる環境を整えることです。
多くのSalesforce製品はそれぞれの構成が異なり、独立して機能しています。しかし、この新しいプラットフォームの目標は、Salesforce内のすべてのデータを1つのプラットフォームに統合し、Salesforce内のアプリケーション間でデータをより簡単にアクセスし共有できるようにすることです。
Salesforce Data Cloudの重要性
どうしてSalesforce Data Cloudがこんなにも注目されているのでしょうか?Data Cloudで可能になった機能を確認していきます!
効率的なデータの管理
従来、SalesforceではSales CloudやService Cloudなど各サービス内で閉じた形でデータを管理し、レポートやダッシュボードを活用してデータを分析していました。しかし、これらのデータは各サービス内でしか参照できないという制約がありました。
たとえば、サービスをまたいだ分析を行う場合、データを一度ダウンロードし、加工する手間が発生します。さらに、データが更新されるたびに新たにダウンロードし直して加工し直す必要があり、非効率的でした。
Data Cloudを活用することで、各サービスのデータを統合し、Data Cloudを通じてリアルタイムで参照できるようになります。これにより、効率的なデータ管理が可能になり、サービスをまたいだデータ分析が簡単に実現できるようになりました。
顧客体験の向上
Data Cloudを活用することで、サービスの壁を越えたデータ収集や分析が可能となります。従来よりも多くのデータを効率的に収集・分析することで、顧客の理解をより深めることができます。
顧客理解が深まることで、よりパーソナライズされた体験を提供でき、顧客満足度を向上させることが可能です。また、Data Cloudでは取得したデータが定期的に更新されるため、顧客の状況やニーズ、環境の変化に迅速に対応できます。
変化への迅速な対応と柔軟な調整により、顧客一人ひとりに合わせた最適な体験を提供し、顧客満足度をさらに向上させることが期待できます。
Salesforce Data Cloudの主要機能
Salesforce Data Cloudは、データチームやマーケティングチーム向けに多くの機能を備えていますが、その多様さゆえにプラットフォームの全容を理解するのが難しい場合もあります。そこで、Data Cloudに関連する最も重要な概念や用語について分かりやすく解説します。
機能 | 概要 |
---|---|
データソース (Data Sources) | Salesforceアプリケーション、Web・モバイルSDK、またはサードパーティ統合を通じてデータをSalesforce Data Cloudに取り込むためのネイティブ接続機能 |
データストリーム (Data Streams) | Salesforce Data Cloudに流れ込む実際のデータ |
Salesforceデータパイプライン (Salesforce Data Pipelines) | データをSalesforceモデルにマッピング可能にするための、ビジュアルUIおよびネイティブライブラリ(関数やオペレーターを含む) |
データスペース (Data Spaces) | ブランド、地域、部門ごとにデータの整理と権限管理を行うための論理的なデータパーティション |
データレイクオブジェクト (Data Lake Objects, DLOs) | Salesforce Data Cloudに取り込まれたデータを保存するためのストレージコンテナ |
カスタマー360データモデル (Customer 360 Data Model) | データの標準オブジェクト、フィールド、メタデータ、関連性を定義するための論理階層およびスキーマ構造 |
データモデルオブジェクト (Data Model Objects, DMOs) | Salesforce Customer 360データモデル内の具体的なデータ構成要素 |
データマッピング (Data Mapping) | DLOからDMOへデータをマッピングし、他のSalesforceアプリケーションでのセグメント作成やアクティベーションに活用するプロセス |
外部データレイクオブジェクト (External Data Lake Objects) | Salesforce Data Cloud外部に保存されたデータにアクセスするための参照場所 |
セグメント (Segments) | 共通のオブジェクト、特性、インサイトを共有するカスタムオーディエンスを、オーディエンスマネージャーで定義 |
アクティベーションターゲット (Activation Targets) | 作成したセグメントやオーディエンスを配信可能な宛先やエンドポイント |
BYOLデータフェデレーション (BYOL Data Federation) | データウェアハウス内のデータをSalesforce Data Cloudで仮想化し、物理的なコピーを作成せずに活用 |
ゼロコピー (Zero-Copy) | Salesforceデータをデータウェアハウスで直接クエリ実行し、物理的なコピーを保存せずに利用 |
加速データフェデレーション (Accelerated Data Federation) | 外部データウェアハウスへのクエリ性能を向上させ、遅延を低減し、データの更新間隔を短縮する機能 |
データストリーム
データストリームは、Salesforce CRMやSalesforce Marketing CloudなどのSalesforce製品群に加え、Amazon S3、Google Cloud Storage、Snowflakeなどの外部データソースからデータをData Cloudに取り込むための機能です。
取り込まれたデータはデータレイクオブジェクト(DLO)に格納され、一部のデータ項目についてはデータ型の編集が可能です。
データレイクオブジェクト(DLO)
データレイクオブジェクト(DLO)は、データストリームで取り込まれたデータを保存する場所を指します。このコンテナにデータが格納されることで、後続のデータ処理や分析が可能になります。
データモデリング
データモデリングでは、データレイクオブジェクトに取り込まれたデータをデータモデルオブジェクト(DMO)に自動または手動でマッピングできます。
マッピングを行うと、仮想化オブジェクトが作成され、複数のデータソースから取得されたデータ間でリレーションを構築可能になります。これにより、データの統合と関連付けが効率的に行えます。
ID解決
ID解決は、異なるデータソースから取り込まれたデータを統合し、顧客データのシングルビューを構築するために利用される機能です。
- 一致ルール: どの条件が一致すれば同一顧客と見なすかを定義
- 調整ルール: データソースの優先順位などを指定
ただし、統合顧客IDを発行するものではない点に注意が必要です。
計算済みインサイト
計算済みインサイトでは、SQLやビジュアルワークフローを活用し、Data Cloud内で取り込んだデータを基にインサイトを構築できます。
- 評価指標やディメンションを定義・計算可能
- 活用例:
- チャネルごとのコンバージョンパフォーマンスを評価
- 商品評価指標を用いて購買行動や閲覧行動を分析
これにより、データをもとにした意思決定や戦略の策定が容易になります。
Salesforce Data Cloudのエディションとライセンスの種類
利用可能なエディション
Salesforce Data Cloudは、以下の標準SalesforceエディションのLightning Experienceで利用可能です
- Developer
- Enterprise
- Performance
- Unlimited
Data Cloud Provisioning(無償ライセンス)について
Sales CloudまたはService CloudのEnterprise EditionまたはUnlimited Editionを既に使用している組織には、無償利用可能なData Cloud Provisioningライセンスが付与されます。これにより、すぐにData Cloudの利用を開始できます。
Data Cloud Provisioningに含まれる内容
項目 | 詳細 |
---|---|
データサービスクレジット | Enterprise Edition: 250,000 Unlimited Edition: 2,500,000 |
データストレージ | 1TB |
Data Cloudシステム管理者 | 1ユーザー |
Data Cloud社内IDユーザー | 100ユーザー |
Data Cloud権限セットライセンス(PSL) | 1,000ライセンス |
インテグレーションユーザー | 5ユーザー |
Salesforce Data Cloudを導入するメリットとは?
Salesforce Data Cloudを導入することで得られる主なメリットは以下の3点です
- 各Salesforce製品で管理されたデータにリアルタイムアクセス
- Salesforce外部で管理しているデータにアクセス
- 生成AIを用いた高度なデータ分析
以下、それぞれのポイントを詳しく解説します。
各Salesforce製品で管理されたデータにリアルタイムアクセス
Salesforce Data Cloudは、Sales CloudやService Cloudなどの異なるデータソースから情報を収集し、統合します。これにより、データが変更されたり新しい情報が追加されたりしても、遅延することなくリアルタイムで参照可能です。
ユーザーは、最新のデータに基づいた分析や意思決定を迅速に行うことができ、ビジネス機会を最大限に活用できます。
- メリット
- データドリブンな意思決定を促進
- リアルタイム情報で柔軟な対応を実現
Salesforce外部で管理しているデータにアクセス
Salesforce Data Cloudは、Salesforceの各種サービスだけでなく、外部アプリケーションとも連携可能です。外部データをダウンロードする手間を省き、異なるデータソースを直接収集・統合することで、より詳細で包括的な顧客データセットを構築できます。
また、EinsteinのAI機能を活用した高度なデータ分析により、市場動向や顧客行動の変化を素早く把握・対応できます。
- メリット
- 外部データとの統合で精度の高い顧客理解を実現
- 顧客ニーズの予測精度向上
- 適切なタイミングでの製品やサービス提供が可能
生成AIを用いた高度なデータ分析
Salesforce Data Cloudは、生成AIの機能を搭載し、業務効率を向上させ、ビジネス成長を加速させるよう設計されています。特にEinstein Copilot(Salesforceアプリケーションに組み込まれた対話型AIアシスタント)は、テキスト入力による操作が可能です。
Einstein Copilotの具体的な活用例:
- 統合管理された顧客データを基にしたメール内容の自動生成
- コールセンターへの問い合わせを自動ナレッジ化
- より効率的でパーソナライズされた顧客体験の提供
- メリット
- 業務効率の大幅な向上
- 顧客体験のパーソナライズ化を推進
- AI活用による戦略的アプローチの強化
Salesforce Data Cloudの料金体系を詳しく解説
一見すると、Salesforce Data Cloudの価格設定は比較的シンプルに思えますが、実際のところはそれほど単純ではありません。Data Cloudのスターターバージョンの基本価格は年間108,000ドルです。ただし、プラットフォーム内の価格設定は消費ベースのモデルに基づいており、Data Cloudでクレジットを購入し、プラットフォームのさまざまな機能を使用するたびにクレジットが消費される仕組みです。以下のようなサービス使用量に応じて料金が発生します。
- 取り込むデータ量や行数
- プロファイル統合数
- クエリの使用量
詳細については、営業担当にお問い合わせください。
さらに、ほぼすべての機能がクレジットを消費するため、クレジットが非常に早く消耗してしまう点です。
また、オーディエンス構築やアクティベーション、広告プラットフォームへの連携といった、他の主要なCDP機能は標準機能では利用できないため、アドオンとして追加購入する必要があります。これに加え、データストレージの料金が1テラバイトあたり1,800ドルと非常に高額です。これに対し、一般的なデータウェアハウスでは1テラバイトあたり約20ドル程度で提供されることを考えると、その価格差はかなり大きいでしょう。
Salesforce Data Cloudを導入したい人が最初に取るべきステップ
https://trailhead.salesforce.com/ja
Salesforce Data Cloudに興味をお持ちの方には、Salesforce Trailheadでの学習をぜひお勧めします。Trailheadは、Salesforceの公式オンライン学習プラットフォームで、AIやSalesforce製品の基本から応用まで、幅広い知識を無料で学べる環境を提供しています。
Trailheadの特徴
- 完全無料: Salesforceに関連する多くの学習コンテンツが無料で利用可能です。
- 初心者でも安心: 初めてSalesforceに触れる方でも、ステップバイステップで学習を進められる教材が豊富に揃っています。
- 柔軟な学習形式: スキマ時間に進められる自己学習形式で、いつでもどこでも学べます。
- 認定資格に繋がる: 学習を進めることで公式のバッジやポイントを獲得でき、スキルを証明する手段としても活用できます。
おすすめ学習トピック
- Salesforce Data Cloudの基礎
Data Cloudの仕組みや機能について学べるモジュールが用意されています。 - AIの活用
Salesforceの生成AI「Einstein」を活用したデータ分析や業務効率化についても学べます。 - Salesforceエコシステム全般
CRMやマーケティング、データ統合の基本を体系的に学ぶことが可能です。
まとめ
本記事では、Salesforce Data Cloudの概要やサービス誕生の背景、そして主要な機能について詳しくご紹介しました。
Salesforce Data Cloudを活用することで、これまで困難であった複数データソースにまたがるデータの統合や、データを横断した高度な分析が可能になります。これにより、新たな示唆を発見し、ビジネスの成長をさらに加速させる強力なツールとなるでしょう。
GENNEでは、Salesforce Data Cloudの導入・活用支援をはじめ、Salesforce製品全般の導入・活用支援を行っています。経験豊富なコンサルタントが、各企業のニーズに応じたサポートを提供し、Salesforceの活用や定着化を支援いたします。
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