目次
- 1 フィールドセールスとは?
- 1.1 フィールドセールスの仕事内容とは?
- 1.2 インサイドセールスとの違い
- 2 コロナ後のビジネスではフィールドセールスは必要ないのか?
- 2.1 インサイドセールスの60%が商談へとつながる
- 2.2 フィールドセールスへのパスが成約率を高める
- 2.3 訪問営業とオンライン営業の成約率に大きな差なし
- 3 フィールドセールスとインサイドセールスどちらに注力するべき?
- 4 フィールドセールスとインサイドセールスを分業するメリット
- 4.1 効率の悪い営業活動を避けることができる
- 4.2 PDCAサイクルを回しやすくなる
- 4.3 リードの取りこぼしを防ぐ
- 5 フィールドセールスとインサイドセールスを分業するデメリット
- 5.1 フィールドセールス部門との協働体制を整えることが求められる
- 5.2 顧客との信頼関係構築が困難
- 6 フィールドセールスとインサイドセールスを連携するポイント
- 6.1 リード情報の保存と共有
- 6.2 インサイドセールスへの意見反映
- 6.3 適切なツールの選択
- 6.4 役割分担の明確化
- 7 最後に
顧客の購買行動の変動と新型コロナウイルスの影響により、企業と顧客との営業関係は顕著に変化しています。
特に、フィールドセールスの対極に位置する「インサイドセールス」は、Web会議などのオンラインツールを活用して遠隔営業を実現し、リモートワーク環境下での営業手法としての効率化と新しいアプローチで注目されています。
一方で、伝統的な営業手法であるフィールドセールスは、これからも営業戦略として重視すべきかどうか疑問が持たれています。
この記事では、フィールドセールスについて再考し、インサイドセールスとの対比や、コロナ時代におけるその役割、将来フィールドセールスに期待されることに焦点を当てて詳しく説明します。
フィールドセールスとは?
フィールドセールスは、「訪問営業」とも呼ばれ、顧客や潜在顧客を直接訪問して製品やサービスについて商談を行い、最終的な注文や契約を獲得する営業方法です。
この手法に対して位置づけられるのがインサイドセールスであり、これは「内勤営業」として知られており、電話やメール、ダイレクトメールなどを通じて遠隔地の見込み顧客と交流を行う手法です。
フィールドセールスの仕事内容とは?
主にフィールドセールスは、インサイドセールスによってセットされたアポイントメントに基づいて顧客を訪れ、商品の提案を行いながらヒアリングを進め、最終的な契約獲得に向けて顧客フォローを実施します。
また、多くの商談を進めても、受注の可能性が低い顧客が多い場合、時間が消費されるだけで目標とする契約数の達成が困難になります。
そのため、マーケティング部門やインサイドセールスが担当する集客およびアポイント獲得に対して、どの顧客が商談後に契約に結びつきやすいかを共有し、単に数を追うだけでなく質を確保するように指示を出すこともフィールドセールスの重要な役割です。
営業経験者には、商談から契約までのプロセスを主に扱う職務と考えてもらうと理解しやすいでしょう。
インサイドセールスとの違い
インサイドセールスは非対面で行われる営業スタイルであるのに対して、フィールドセールスは主に対面での営業活動を実施します。以下の表はインサイドセールスとフィールドセールスの違いを示しています。
カテゴリ | インサイドセールス | フィールドセールス |
---|---|---|
営業手法 | 非対面営業 | 対面営業 |
役割 | ・リードの育成 ・リードの資格評価 |
・商談プロセスの管理 (商談開始からクロージングまで) ・契約の獲得 |
KPI | ・新規商談の数 ・リードの成約率 ・アップセル・クロスセルの成約率 |
・成約数 ・成約の獲得 |
コロナ後のビジネスではフィールドセールスは必要ないのか?
フィールドセールスの必要性はコロナ禍でも変わらないか? 新型コロナウイルスの感染拡大によって、フィールドセールスの環境は劇的に変化しました。2021年5月の時点で、展示会やセミナーなどの対面イベントは積極的に開催されておらず、訪問営業も感染リスクのため対面を断られることが増えています。
このような状況の中で、インサイドセールスの重要性が増しています。
インサイドセールスの60%が商談へとつながる
株式会社インターパークによる2020年5月の調査「インサイドセールスの認知度及び実施状況、コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛の中でのインサイドセールスの活用変化」によると、インサイドセールスを導入している企業の約60%が商談に至っています。
※引用:SalesZine(インターパークの調査) 以前は、インサイドセールスが主にリード獲得までを目的としていましたが、フィールドセールスの活動制限が増える中で、「商談」や「受注」など、従来フィールドセールスが担っていた役割をインサイドセールスが担うようになっています。
この情報だけを見ると、フィールドセールスはもはや不要かもしれないと感じるかもしれません。しかし、その必要性を完全に否定することはできません。
フィールドセールスへのパスが成約率を高める
インターパークの調査によると、インサイドセールスからフィールドセールスへの引き継ぎを行う営業手法を採用している企業の80%で、フィールドセールスの成約率が向上しています。これは、顧客が直接営業担当者と会うことで安心感やコミュニケーションの容易さが増し、結果として成約につながることが多いからです。オンライン商談だけでは、コミュニケーションが十分にとれず、顧客の疑問が解消されないことがあります。
コロナ禍においても、インサイドセールスとフィールドセールスが適切に役割分担と連携を行うことで、成約率を高め、営業活動の効率化が図られるというデータがあります。
「コロナによりインサイドセールスだけを重視すべき」との考えが浮上していますが、フィールドセールスには独自の価値があります。顧客とのコミュニケーションにおいて、インサイドセールスとフィールドセールスの役割を明確にし、適切な連携を設計することが重要です。
訪問営業とオンライン営業の成約率に大きな差なし
最近のコロナ禍の影響で、以前のように容易に企業訪問が行えなくなりました。訪問を強行すると非常識な企業と見なされ、信頼を失う可能性があります。このため、インサイドセールスでもオンラインで商談を行うことが一般的になっています。
Hubspotの「日本の営業に関する意識・実態調査」(2021年2月)によれば、リモート営業を導入した企業の商談成約率は42.2%、導入していない企業では39.1%で、営業スタイルによる成約率の大きな差は見られませんでした。
オンライン商談は、移動時間や準備工数の削減、会議室が不要、必要な資料をすぐに共有できるなどの利点があります。
また、訪問機会の減少による見込み客との接触頻度の低下をカバーする方法として、メールを活用することも一つの手です。ただし、闇雲にメールを送り続けるのではなく、目的に応じた適切なコミュニケーションが求められます。新商品やサービスの案内、季節の挨拶、イベントへの招待など、メールを送る機会は多く存在します。
フィールドセールスとインサイドセールスどちらに注力するべき?
企業が持続的に成長するためには、売上を増やすことが必須です。これはインサイドセールスであれ、フィールドセールスであれ、同様です。
インサイドセールスとフィールドセールスのどちらが優れているかではなく、自社の限られた営業リソースをどう活用して効率的に売上を伸ばすかを深く考慮し、適切な戦略を選択することが重要です。
次に考慮すべきは、フィールドセールスとインサイドセールスのどちらを重視するかです。
結論から言うと、全ての業界でインサイドセールスへの完全移行が成果をもたらすわけではありません。
自社が扱う商品やターゲット顧客のニーズに基づき、インサイドセールスとフィールドセールスを適切に配分し、両者の協力を強化することで営業効率を最大限に高めることが求められます。
例えば、自動車や不動産のような高価な商品を扱う場合、対面営業の役割がより重要になります。マンション購入時には、電話やメールだけの営業では決断しにくいと感じる顧客が多く、実際に物件を確認したり、営業担当者の意見を直接聞くことを望むニーズが強いからです。
フィールドセールスとインサイドセールスを分業するメリット
効率の悪い営業活動を避けることができる
インサイドセールスの部署と協力して、ターゲットの選定が行え、より確実なアポイントメントを取ることが可能です。
さらに、フィールドセールス部門は商談や提案作業に専念できるという利点があります。
インサイドセールスを利用しない場合は、フィールドセールスが直接顧客へアプローチすることになります。
企業への訪問を直接行っても、担当者が不在であったり、訪問営業を断られることが少なくないです。その結果、営業スタッフのモチベーションが下がることもあります。
インサイドセールス部門を設けると、事前にリードナーチャリングを行い、高確度の顧客だけを訪問することができるため、成約率が向上します。
PDCAサイクルを回しやすくなる
リードの取りこぼしを防ぐ
インサイドセールスを配置することで、ニュースレターやキャンペーン、ウェビナーから得られる大量のリードにアプローチが可能です。これにより、フィールドセールスには有望な案件だけを引き渡すことができます。
営業担当者が一人で一連の営業活動を行う場合、時間の制約があるため、全てのリードにアプローチすることが難しくなります。その結果、高確度の顧客に十分なアプローチを行えず、成約チャンスを逃すこともあります。
インサイドセールスを配置すれば、大量のリードにアプローチし、高確度の顧客を見極めてアポイントに繋げることができます。これにより、リードの取りこぼしを防ぎ、フィールドセールス部門に確度の高い案件を引き渡せます。
フィールドセールスとインサイドセールスを分業するデメリット
フィールドセールス部門との協働体制を整えることが求められる
見込み顧客の効率的な引き継ぎを行わないと、無駄な労力や問題が生じることがあります。高い確度を持つ見込み顧客を適切に扱うためには、フィールドセールス部門だけでなくマーケティング部門とも連携することが求められます。
そのための連携を強化するには、SFA(Sales Force Automation)のようなツールを使用して見込み顧客の情報を集中管理し、それを可視化することが重要です。
適切なタイミングで情報を引き継ぐことで、顧客がまだ関心を持っている間に情報を提供できます。これにより、営業担当者はより効率的に営業活動を行い、結果的に受注率を向上させることができます。
また、他の部門との隔たりを生じさせないように、協力的で共同作業がしやすい環境を築くことができる営業マネージャーを育成することが重要です。
顧客との信頼関係構築が困難
インサイドセールス部門が初めての接点であることから、非対面の形式では顧客との信頼関係を築きにくいというデメリットがあります。
非対面では顧客の反応や感情の変化が捉えにくく、コミュニケーションが難しくなる可能性があります。
インサイドセールス部門はコンタクトの回数を増やし、コミュニケーションの取り方を工夫することで、顧客との信頼関係を構築できるよう努力が必要です。
これらのメリットとデメリットを考慮した上で、営業活動の分業体制の検討を進めていくことが望まれます。
フィールドセールスとインサイドセールスを連携するポイント
リード情報の保存と共有
インサイドセールスとフィールドセールスの部門間での連携においては、顧客情報をどのように収集し、共有するかが極めて重要です。以下の情報が重要です。
- 予算
- 決裁権
- ニーズ
- 導入予定時期
SFAやCRMを用いて顧客情報やプロジェクトの状況をリアルタイムで共有することが求められます。これにより、担当者間での情報交換を知識として社内に蓄積し、連携を容易にします。
インサイドセールスへの意見反映
フィールドセールスは、インサイドセールスによって引き渡されたリードが最終的に契約に至ったか、または失敗に終わったかをインサイドセールスと共有し、その理由についてもフィードバックを行うことが重要です。
さらに、フィールドセールスの担当者が顧客と直接対話する中で得た、成約に繋がる顧客の課題や一般的な断り文句などの情報もあります。これらの情報をインサイドセールスに提供することによって、インサイドセールスの顧客理解を深め、断り文句への対応策を強化するのに役立てることができます。
適切なツールの選択
役割分担の明確化
顧客対応のフローを明確にすることで、部門間の連携が成功しやすくなります。ホットリードの状況は担当者によって異なるので、引き渡しのタイミングを事前に定めることが重要です。
以下の事項を事前に決定しておくと、フィールドセールスへの引き渡しがスムーズに行えます。
- 案件の詳細
- 緊急度
- 担当者の地位
- 案件の規模
最後に
この記事では、フィールドセールスの基本と、インサイドセールスとの連携方法について説明しました。
新型コロナウイルスの影響により、企業の営業環境は大きく変わりました。オフライン営業が難しくなる中、インサイドセールスの役割がより重要になっています。ただし、フィールドセールスが企業にとって不要になったわけではなく、インサイドセールスとの効果的な連携によってその価値をさらに向上させることが可能です。
記事で取り上げた「リード情報の収集と共有」「ホットリードの明確化」「インサイドセールスへのフィードバック」「適切なツールの選択」などのポイントを念頭に置いて、営業効率と売上の増加を図りましょう。