目次
- 1 Sass営業と一般営業の違い
- 2 Sass企業の2つの営業戦略
- 2.1 スクリーニング型:広く見込み客を集めて選別・クロージング
- 2.2 エンゲージメント型:1社を深く攻めて、社内展開を広げる
- 3 Sass営業戦略はエンタープライズ企業の開拓が重要
- 3.1 アカウント単価が伸びやすく、スケールが効く
- 3.2 解約率が低く、契約が長期化しやすい
- 4 エンタープライズ企業と取引するための具体的戦略
- 4.1 リファラル(紹介)を活用して信頼ある接点をつくる
- 4.2 代理店や販売パートナーに営業を委託する
- 5 実際に成果を出したSaaS営業戦略の事例2選
- 5.1 事例①:リファラルを活用し、エンタープライズ初受注に成功したSaaS企業
- 5.2 事例②:拡大型戦略にシフトし、1社売上を8倍に成長させたSaaS企業
- 6 エンタープライズ企業へ営業する際の注意点
- 6.1 リード獲得から契約までのリードタイムが長い
- 6.2 セキュリティ体制への信頼が商談の分かれ目に
- 6.3 柔軟性のあるサービス設計が必要
- 7 中小企業やリード拡大には?効率重視の営業手法とは
- 7.1 テックタッチ:自動化中心で“広く・薄く”対応
- 7.2 ロータッチ:半自動+一部人対応で“可能性ある層”を育成
- 7.3 ハイタッチ:重点顧客に対して“手厚く・深く”対応
- 8 さいごに|Sassエンプラ営業にはSFA/CRMを
「SaaSの営業って、普通の営業と何が違うんだろう?」
そんな疑問を抱きながら、自社の営業成果に伸び悩みを感じていませんか?
SaaSビジネスでは、従来の営業とは異なる“戦略設計”が求められます。
属人化しやすい営業フロー、LTV重視の評価軸、導入後の継続率など──これらを意識した型を持たなければ、いくら良いプロダクトでも成果は頭打ちになります。
特に注目されているのが、「エンタープライズ企業の開拓」です。
高単価・長期契約が見込める分、営業の体制づくりや戦術の精度が結果に直結します。
本記事では、SaaS営業と一般営業の違いを整理したうえで、
エンタープライズ企業と取引するための具体戦略、実際の成功事例、よくある落とし穴までを体系的に解説します。
SaaS営業を仕組み化し、再現性のある成果を出したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
Sass営業と一般営業の違い

SaaS営業と従来型の営業(パッケージモデルや売り切り型ビジネス)では、営業活動の目的や評価指標が大きく異なります。
たとえば、パッケージモデルの企業では、製品を1件でも多く販売することが成果に直結します。契約の時点で利益が確定するため、営業担当者はクロージング力や提案スキルなどの“テクニック”に重きを置き、短期での成果を狙う傾向があります。
一方で、SaaSモデルはサブスクリプション型=継続課金型のビジネスです。初回契約時の売上だけでなく、
「サービスの利用期間」「アップセル・クロスセルによる顧客単価の拡大」「同一企業内での利用部門の横展開」など、中長期的な関係性の構築が営業成果に直結します。
つまり、売って終わりではなく、“継続的に使い続けてもらうための関係性”まで設計するのがSaaS営業の本質です。
そのため、SaaS営業では一時的なセールストークや強引なクロージングではなく、顧客の課題や導入目的を深く理解し、長期的な取り組みができる企業へアプローチする姿勢が求められます。
ときには、目先の成約よりも“解約されにくい顧客を選ぶ”ことすら重要になるのです。
Sass企業の2つの営業戦略

SaaS企業が営業活動を進める上では、顧客との関係の築き方に応じて2つの戦略タイプが存在します。
それが、「スクリーニング型(絞り込み型)」と「エンゲージメント型(拡大型)」の2つです。
それぞれ、アプローチ方法や目指す成果が大きく異なるため、自社のプロダクト特性やターゲット層に合わせた使い分けが必要です。
スクリーニング型:広く見込み客を集めて選別・クロージング
スクリーニング型の戦略は、多くの潜在顧客を認知段階で集め、選別を経て契約まで落とし込む“ふるい分け型”の営業戦略です。
この手法は、SaaSの中でも短期的な売上獲得や、新規顧客の件数を増やしたいときに効果を発揮します。
主なプロセスは以下の通りです:
ステップ | 内容 |
---|---|
認知獲得 | 広告やWebサイトなどで幅広い層に接点を持つ |
リード選別 | 名刺情報やフォーム入力などをもとに、興味度や導入可能性をスクリーニング |
商談化 | 選別された見込み客にアプローチし、案件化を狙う |
契約 | 短期クロージングを前提に提案を行い、受注へつなげる |
この戦略では、初期接点が多いぶん、契約に至る顧客数は限られます。「母数の最大化からの絞り込み」が特徴です。
エンゲージメント型:1社を深く攻めて、社内展開を広げる
一方で、エンタープライズ企業を主なターゲットとする場合に有効なのが、エンゲージメント型(拡大型)の営業戦略です。
こちらは、1社との関係性を長期的に深めながら、社内の複数部署へと利用を広げていくスタイルです。
この戦略では、以下の流れで進行します:
ステップ | 内容 |
---|---|
ターゲット選定 | 自社にとって戦略的に有望な企業を選び抜く |
接点拡張 | 紹介や既存接点から、新たな関係者へのアクセスを広げる |
信頼構築 | 定期的な情報発信やサポートで、パートナーとしての信頼を育てる |
社内展開 | 導入部門から他部門へと横展開し、アカウント規模を拡大 |
このモデルは、“少数から始めて徐々に広げていく”営業スタイルであり、LTVを最大化する上で非常に有効です。
特に高機能なSaaSや大規模運用が前提となる製品では、こちらのアプローチの方がフィットします。
Sass営業戦略はエンタープライズ企業の開拓が重要

前章では、SaaS営業では後者の「エンゲージメント型」の戦略の方がフィットしているとお伝えしました。
その具体的なターゲットこそが、エンタープライズ企業(大手〜中堅規模の企業)です。
エンタープライズ企業を営業戦略の中核に据えることで、SaaS企業はLTV(顧客生涯価値)を大きく伸ばしやすくなり、売上の安定化にもつながります。
中でも、エンタープライズ企業と取引することには主に2つの大きなメリットがあります。
アカウント単価が伸びやすく、スケールが効く
SaaSの多くは、アカウント数や利用人数に応じて月額課金されるモデルです。
つまり、社員数が多い企業ほど、自然と顧客単価が高くなる傾向にあります。
さらに、大企業では一部署で成果が出れば、他部署への水平展開(横展開)が起こることも珍しくありません。これにより、1社から得られる売上がさらに拡大する可能性があります。
また、エンタープライズ企業は資金的余裕があるため、高価格帯のプランを選択してもらえる確率も高いです。
スタートアップや小規模企業では導入が難しいオプション機能付きの上位プランも、スムーズに契約に至るケースが見込めます。
解約率が低く、契約が長期化しやすい
もう一つの大きな利点は、解約リスクが低く、継続率が高いという点です。
エンタープライズ企業では、既存の業務プロセスや社内システムを変更することが非常に手間であり、
一度導入されたSaaSが“組織に定着”すれば、よほどの理由がない限り解約されにくくなります。
この解約率の低さは、サブスクリプション型ビジネスにおいて極めて重要な要素です。
月額課金モデルでは、契約後に長く使ってもらえるほどLTVが向上し、事業の安定と成長が見込めます。
柔軟で動きやすい小規模企業とは異なり、大企業は意思決定に時間がかかる分、一度契約すれば長く使ってもらえる傾向が強いのです。
エンタープライズ企業と取引するための具体的戦略

SaaS企業にとって、エンタープライズ企業との取引は大きな成長要因になりますが、ゼロからの関係構築には相応の戦略が必要です。
とくに、まだ接点のない大手企業に対して、突然アポイントを申し込んでも、簡単に商談に持ち込めることはほとんどありません。
こうした場面で有効なのが、第三者の信頼を活用した「パートナーセールス」のアプローチです。
ここでは、エンタープライズ企業を開拓する際に実践すべき2つの具体戦略をご紹介します。
リファラル(紹介)を活用して信頼ある接点をつくる
エンタープライズ企業と初めて接点を持つには、信頼できる第三者からの紹介=リファラルの活用が効果的です。
具体的には、すでに関係を築いているビジネスパートナーや既存クライアントなどから、ターゲット企業を紹介してもらう方法です。
紹介が成立し、相手との初期接点がスムーズに作れる場合には、成果報酬型の契約を結ぶことでリード獲得を効率化することも可能です。
信頼の橋渡しがあるだけで、商談の進行速度や受注確度が大きく変わってきます。
代理店や販売パートナーに営業を委託する
もう一つの有力な手段が、代理販売(セールスパートナー)を通じた営業展開です。
自社の営業チームではリーチしにくい業界や企業群に対して、すでに実績や認知度のある企業に販売を委託することで、導入ハードルを下げることができます。
とくに、対象となるパートナーが業界内での影響力が強い場合は、リファラルではなく“販売そのもの”を任せることで成果が出やすくなります。この戦略は、自社ブランドを補完しながら新規市場にアクセスできる手段として、SaaS企業の拡販フェーズにおいて非常に有効です。
実際に成果を出したSaaS営業戦略の事例2選

ここでは、実際にSaaS企業が営業戦略を見直すことでエンタープライズ企業との取引を実現し、LTVを大きく向上させた成功事例を2つご紹介します。
いずれも、これまでに解説してきた「拡大型戦略」「パートナー活用」が成果につながった例です。
事例①:リファラルを活用し、エンタープライズ初受注に成功したSaaS企業
社内DXツールを提供するSaaS企業A社は、従来は中小企業を中心に直販営業を行っていましたが、単価が伸びず事業の伸び悩みに直面していました。
特に、大手企業に対しては接点がなく、アポ獲得すら困難な状況が続いていたといいます。
そこで同社は、既存の取引先や業界団体と提携し、リファラル(紹介)によるパートナーセールスを導入。信頼ある経由で紹介されたエンタープライズ企業との商談に成功し、初めて月額50万円を超える高単価プランの契約を獲得しました。
その後、導入部門での成果が評価され、同一企業内の別部門への追加契約にもつながり、1社あたりのLTVは従来比で約3倍に拡大。紹介チャネルの構築が、エンプラ市場への突破口となった好例です。
事例②:拡大型戦略にシフトし、1社売上を8倍に成長させたSaaS企業
B社は、データ管理SaaSを提供しており、もともとは中小企業層を中心に新規獲得を重視した営業体制でした。
しかし、契約単価が小さくチャーン率も高かったため、「数をこなしても売上が安定しない」という課題に直面していました。
そこで営業戦略を転換し、ターゲットを少数のエンタープライズ企業に絞り、拡大型の営業戦略にシフト。特定企業に対しては導入部門での成果をしっかり支援しながら、関係者を増やして社内の他部署へと展開していきました。
結果、1社あたりの契約金額は月5万円から月40万円へと増加。アップセル・クロスセルの成功によって、LTVが大幅に向上し、継続率もほぼ100%という理想的な状態を実現しました。
エンタープライズ企業へ営業する際の注意点

SaaS営業では、LTVの高いエンタープライズ企業をターゲットとする戦略が有効であることはすでにご紹介しました。
しかし、大企業を相手にするからこそ、営業活動において気をつけるべきポイントがいくつか存在します。
事前にその注意点を理解し、営業フローや製品仕様、社内体制を整えておくことで、商談化・受注までの確度とスピードを高めることが可能です。
ここでは、エンタープライズ営業に取り組む際に押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。
リード獲得から契約までのリードタイムが長い
大企業は、意思決定プロセスが複雑かつ階層的です。担当者レベルで好感触を得られても、部門長・役員・情報システム部門など複数の関係者が導入判断に関わるケースが多く、契約までに数ヶ月〜1年近く要することも珍しくありません。
また、予算の確保が前年度から行われているケースもあるため、年度初めの段階でアプローチできていないと、すでに他社に選定されてしまっていることもあります。
エンプラ営業では、「いつ・誰に・どのような順番で」アプローチすべきかの設計が重要です。早期接点の構築がカギを握ります。
セキュリティ体制への信頼が商談の分かれ目に
大企業は、社内外に膨大なステークホルダーを抱えており、セキュリティリスクに非常に敏感です。
導入検討の段階で「情報保護体制」「データ管理方法」「脆弱性対策」などを詳細に確認されるケースも多く、対策が不十分だとその時点で候補から外されてしまう可能性があります。
そのため、SaaS企業側では、
- 製品セキュリティに関するドキュメントの整備(例:SOC2、ISMS等)
- 営業担当者がセキュリティポリシーを正しく説明できる体制
- セキュリティに関するFAQや対応表の事前準備
などを整えておくことが求められます。
“導入時の安心感”が意思決定の前提条件になると理解しておきましょう。
柔軟性のあるサービス設計が必要
大企業とひとくくりに言っても、業界・規模・部門によって求められる機能や要件は大きく異なります。
そのため、固定された画一的なプランだけでは導入のハードルを感じさせてしまうこともあります。
営業の初期段階から、「この機能は対応できるか?」「他部署と連携できるか?」といった柔軟性を求める声が多くなるのも、エンタープライズ営業の特徴です。
可能な範囲で機能を組み替えられる構成や、エンタープライズ向けのカスタムプランを用意しておくことで、リードの受注率を大きく高めることができます。
中小企業やリード拡大には?効率重視の営業手法とは

エンタープライズ企業の開拓はSaaS営業において大きな成長要因となりますが、一方で、すべてのリソースを大手企業だけに集中させてしまうのは効率的とはいえません。中小企業層にも可能性のあるリードは多く存在しており、ターゲット層に応じて適切なリソース配分や営業手法を選ぶことが、全体の営業効率を高める鍵となります。
このとき重要となるのが、「テックタッチ・ロータッチ・ハイタッチ」という3段階の対応モデルです。
顧客ごとのポテンシャルに応じて、どこまで人が介在するべきかを戦略的に判断し、リソース配分の最適化を図ります。
テックタッチ:自動化中心で“広く・薄く”対応
単価が比較的低く、対象となる顧客数が多い層には、テックタッチ型のアプローチが有効です。
具体的には、チャットボット・メルマガ・オンボーディングツールなどを活用し、極力人的リソースを使わずにフォローを自動化します。
この層では個別対応を行うとコスト負担が大きくなるため、仕組みで支える運用体制の構築がポイントになります。
ロータッチ:半自動+一部人対応で“可能性ある層”を育成
ある程度成長の兆しが見られる顧客や、単価が中間層にあたる企業には、ロータッチ型の営業対応が適しています。
このモデルでは、基本的にはツールによる自動化が主ですが、状況に応じて担当者が個別対応を行うハイブリッド運用を行います。
将来的なアップセルを狙える層であるため、選別と対応のバランスが重要な層といえるでしょう。
ハイタッチ:重点顧客に対して“手厚く・深く”対応
契約金額が大きく、継続性が期待できるエンタープライズ企業などの優良顧客に対しては、ハイタッチ対応が必須です。
この層では、専任担当者による定期訪問や個別サポートを通じて関係性を深め、チャーン防止やアップセルにつなげる必要があります。
人的リソースは最も多くかかりますが、売上インパクトも大きいため、営業・CS・サポートの連携体制を整えることで高い投資対効果が期待できます。
さいごに|Sassエンプラ営業にはSFA/CRMを
SaaS営業でエンタープライズ企業との取引を実現するには、戦略やノウハウだけでなく、それを支える「再現性ある仕組み」が不可欠です。
- 担当者ごとに提案内容がバラバラになってしまう
- 情報共有が不十分で、せっかくの引き合いがうまく活かせない
- 案件が複雑化し、誰がどの顧客に何をしたかが分からない
──そんな属人化や営業体制の曖昧さが、成果の伸び悩みに直結していませんか?
特に、エンタープライズ企業との商談では、1つの失注が大きな機会損失につながります。
だからこそ、SFA/CRMを活用し、営業活動を“見える化・仕組み化”していくことが、営業組織としての成長に直結します。
弊社では、営業活動の見直しから、SFA/CRMツールを活用した仕組み化までを一気通貫でサポートしています。
「属人的な営業を脱却したい」「戦略はあるが現場が回っていない」
そんな課題をお持ちの企業様に対して、“成果につながる営業体制”の構築を実践的にご支援いたします。