目次
- 1 営業プロセスの見える化とは?
- 1.1 営業プロセスの見える化の重要性
- 1.2 ブラックボックス化された営業プロセスのリスク
- 2 2種類の営業プロセス
- 2.1 BtoBの営業プロセス
- 2.2 BtoCの営業プロセスとの違い
- 3 営業プロセスを可視化するメリットとは
- 3.1 営業プロセスのフローを最適化できる
- 3.2 営業活動を標準化できる
- 3.3 マネジメントを標準化できる
- 4 営業プロセスを可視化するステップ
- 4.1 ステップ①:お客様の購買プロセスを見える化する
- 4.2 ステップ②:自社の営業プロセスを明確にする
- 4.3 ステップ③:営業プロセスを定義する
- 5 見える化した営業プロセスを定着させるコツ
- 5.1 案件量の営業プロセス・マネジメント
- 5.2 進捗状況の営業プロセス・マネジメント
- 5.3 行動量の営業プロセス・マネジメント
- 6 ツールを活用して営業プロセスを定着させよう
- 6.1 SFAを活用した営業プロセスマネジメント
- 6.2 ツール定着のポイントはマネージャーのかかわり方
- 7 営業プロセスの可視化を有効活用した企業の事例
- 7.1 営業プロセスの可視化による、戦略的な営業活動の実現
- 7.2 脱属人化対策による、営業生産性の向上
- 8 さいごに
従来、営業成績は各営業担当者のスキルや経験によって大きな差が生じていました。
しかし、消費者の購買行動の変化や市場競争の激化により、従来のような個人の能力に依存した営業手法では成果を上げにくくなっています。
そこで、現在多くの企業が取り組み始めているのが、営業成績を含めた「営業プロセスの見える化」です。
営業プロセスや営業成績の可視化を通じて営業力の強化を図る企業が増えている一方で、
「まだ導入できていない」「導入はしたが成果に結びついていない」と感じている企業も少なくないでしょう。
本記事では、営業の見える化の重要性や、それによって実現する営業力強化のポイントと活用ツールについて詳しく解説します。
営業プロセスの見える化とは?

営業プロセスの見える化とは、営業活動の一連の流れを図や表などで可視化し、問題点を明確にすることを指します。
具体的には、最初の接点から購買に至るまでのプロセスを分解し、目に見える形で整理することを意味します。
営業プロセスの見える化の重要性
例えば、訪問数は多いのに成約率が低いという課題があったとします。
営業プロセスが可視化されていないと、
「とにかくもっと訪問しろ!」といった的外れな指示が出される可能性があります。
しかし、営業プロセスを見える化していれば、
- 提案の仕方に問題があるのか?
- ヒアリングが十分にできていないのか?
- ターゲットの選定が適切か?
といった具体的な課題が特定でき、適切な改善策を講じることができます。
これにより、無駄な労力をかけずに成果を向上させることが可能になります。
ブラックボックス化された営業プロセスのリスク
営業プロセスが見える化されていないと、営業活動が個々の担当者のスキルや経験に依存しがちになります。
その結果、優秀な営業担当者が退職すると業績が悪化し、営業活動の進捗が不透明で、問題の特定や改善が困難になってしまいます
一方で、営業プロセスを見える化すれば、どのフェーズで何が課題なのかを全員が共通認識として持つことができ、どこを改善すれば次のフェーズに進めるのかが明確になります。
2種類の営業プロセス

BtoBの営業プロセス
BtoB(企業間取引)の場合、一度購買が成立すると継続的な取引へと発展するケースが一般的です。
BtoBの営業では、以下のような特徴があります、
- 商材の専門性が高く、購買価格も高額になりやすい
- 商談の過程で、要望・予算・納期を引き出し、購買の合理的な理由を提案する必要がある
- 関連部門の検討や社内稟議を経て、最終決裁権者が購買を決定する
このように、企業内での意思決定プロセスが複雑であるため、商談を重ねながら慎重に進める必要があります。
BtoCの営業プロセスとの違い
BtoBでは、組織としての意思決定プロセスが長く、担当者が前向きでも即購買にはつながりにくいのが特徴です。
- 担当者が持ち帰り、社内で検討 → 商談 → 再検討を繰り返す
- 社内の様々な利害関係者と調整しながら最終判断を下す
一方で、BtoC(個人向け取引)の場合、
- 購入者自身が最終決定権を持つことが多い
- 納得すれば即購買に繋がるため、プロセスが短い
BtoBとBtoCの営業プロセスで特に意識すべき点は、「購入者」と「最終決裁者」が異なるケースがあることです。
BtoCでは、その場で購入を決められる相手を納得させればスムーズに成約につながりますが、BtoBでは組織内の承認フローを考慮しながら戦略的に進める必要があります。
営業プロセスを可視化するメリットとは

営業プロセスを可視化することで、営業活動がブラックボックス化するリスクを回避できるだけでなく、さまざまなメリットが生まれます。
では、具体的にどのような効果があるのか見ていきましょう。
営業プロセスのフローを最適化できる
営業プロセスを可視化すると、営業活動のパターンやノウハウが明確になり、正確な情報を共有できるようになります。これにより、
- 属人化しやすい営業ノウハウをチームで共有できる
- どのプロセスに課題があるのか明確になり、適切な改善策を打ち出せる
といった効果が期待でき、営業フローの最適化につながります。
営業活動を標準化できる
営業の標準化とは「誰が担当しても一定の成果を生み出せる環境」を構築することです。
組織内の優秀な営業担当者が持つ専門知識が全体に行き渡ることで、新人や成績に課題を抱える社員の成長を加速させることができます。さらに、「先輩の手法を真似る」といった個人依存型の指導法から離れ、より体系的な教育システムを構築できるようになります。また、人材育成の方法が標準化されることで、教育にかかる時間的・経済的リソースの大幅な削減も実現します。
これらの要素が組み合わさることで、最終的には組織全体の営業力強化という成果へとつながるのです。
マネジメントを標準化できる
営業プロセスの可視化は、営業担当者のみならず、管理職にとってもメリットをもたらします。この体系的なアプローチは「営業プロセスマネジメント」と呼ばれています。
このマネジメント手法を導入することにより、管理者は案件の最新状況をリアルタイムで確認できるようになります。これにより、各営業担当者に対して次のステップに関する的確なアドバイスや支援を提供することが可能になります。また、個人的な感覚や経験則に頼るのではなく、具体的なデータに基づいた指導を行うことができます。
営業マネジメントの標準化を通じて、チーム全体の業績を向上させ、より計画的かつ戦略的な営業活動の実現が可能になります。これは単なる効率化を超え、組織全体の営業力を高める重要な取り組みと言えるでしょう。
営業プロセスを可視化するステップ

営業プロセスを見える化するためには、以下の3つのステップを順番に進めていくことが重要です。
ステップ①:お客様の購買プロセスを見える化する
営業プロセスを設計する前に、まずお客様が購買に至るまでの流れを明確にすることが必要です。
お客様の購買プロセスとは、
- 課題の認識(何かしらの問題やニーズを感じる)
- 解決策の情報収集(インターネットやセミナー、営業担当者から情報を得る)
- 製品・サービスの比較検討(複数の選択肢を比較する)
- 最終決定(社内承認や意思決定を経て、購入を決める)
- 購買(実際の契約や発注を行う)
このプロセスを明確にすることで、営業活動がどのフェーズに影響を与えるべきかを把握できます。
ステップ②:自社の営業プロセスを明確にする
次のステップでは、お客様の購買行動に合わせて自社の営業プロセスを体系化します。たとえば、お客様が情報収集段階にある場合は、セミナー開催や有益な資料提供に力を入れます。一方、比較検討段階に移行したお客様に対しては、製品デモンストレーションや具体的な提案活動を展開します。
このプロセスにおいて最も重視すべきは、自社の利益追求ではなく、お客様が得られる価値を最大化することです。効果的な営業活動の実現には、営業部門単独の取り組みだけでは不十分であり、マーケティングやカスタマーサポートなど他部門との緊密な連携が不可欠となります。
さらに、営業プロセスの効率化を進めるためには、CRMやSFAの導入による情報共有の仕組み構築や、バックオフィス部門との連携による支援体制の見直しも重要です。これらの要素を総合的に検討し、実装することで、顧客中心の効果的な営業プロセスが確立されます。
ステップ③:営業プロセスを定義する
営業プロセスの明確化後は、各フェーズにおける具体的な行動定義へと進みます。実際の営業現場では、「初回訪問」というフェーズ一つとっても、Aさんがパンフレットやデモ動画を提示する一方、Bさんはヒアリングに重点を置くなど、営業担当者によって異なるアプローチが見られます。
このような個人差が生じると、お客様の購買プロセスとの不整合が発生し、最終的な受注率に大きな差が生まれる要因となります。この課題を解決するためには、各フェーズにおける明確なゴール設定が必要です。
例えば、初回訪問の目的を「顧客に自社の課題を認識してもらうこと」と定義し、提案フェーズでは「競合との比較における自社の優位性を理解してもらうこと」を目標とするなど、段階ごとに達成すべき具体的な行動指針を策定します。
このように営業プロセスを標準化することで、経験豊富なベテラン社員も新入社員も、同じ品質の営業活動を展開できる環境が整います。結果として、個人の能力や経験に依存せず、組織として安定した成果を生み出す仕組みの構築が可能となります。
見える化した営業プロセスを定着させるコツ

営業プロセスを見える化するだけでは意味がなく、それを組織内に定着させることが重要です。
そのためには、営業KPIを設定し、適切にマネジメントすることが欠かせません。
ここでは、営業プロセスの定着に必要な3つのマネジメントのポイントを解説します。
案件量の営業プロセス・マネジメント
案件量のマネジメントとは、営業担当者がどれだけの商談を保有しているかを管理することです。
例えば、
- 営業担当者ごとの担当顧客数
- 商談件数
といったKPI(指標)を設定し、適切な案件数を維持することが重要です。
もし案件量が少なすぎる場合は、新規開拓が必要になりますし、
逆に多すぎる場合は、一つひとつの案件に十分な時間を割けず、成約率が下がる可能性があります。
そのため、案件量を適切に管理し、営業リソースを最適化することがポイントです。
進捗状況の営業プロセス・マネジメント
案件数だけでなく、各商談がどれだけ進んでいるのかを把握することも重要です。
進捗状況を管理することで、以下のような課題を発見できます。
- 商談が進んでいない(停滞している)案件が多い → 改善策が必要
- 一定のフェーズで成約率が低い → そのフェーズの対応を強化すべき
例えば、KPIとして、
- 商談の進捗率(フェーズごとの案件数)
- 受注率(案件数に対する成約件数の割合)
などを設定すると、どの段階でボトルネックが発生しているのかが分かり、具体的な対策を立てやすくなります。
行動量の営業プロセス・マネジメント
営業担当者の具体的な行動をKPIとして管理することも、営業プロセスの定着に欠かせません。
例えば、
- 訪問件数や架電数(1日に何件の営業活動を行ったか)
- 1件あたりの商談時間(商談の質を維持するための指標)
- 提案資料の送付件数(具体的な提案まで進めた案件数)
といった指標を管理することで、
「どの行動が成果につながるのか?」を分析し、改善点を明確にできます。
さらに、データを蓄積することで、
- 効果的な営業フローを標準化できる
- 新人や中途採用者でも成果を出しやすい仕組みを作れる
といったメリットがあり、組織全体の営業力強化につながります。
ツールを活用して営業プロセスを定着させよう

営業活動のマネジメントは、ツールを活用することで効率的に管理・改善できます。
特に、SFA(営業支援システム)を活用することで、営業プロセスの見える化がスムーズになります。
SFAを活用した営業プロセスマネジメント
SFA(Sales Force Automation)とは、営業支援システムのことで、営業活動のさまざまなデータを管理・共有できるツールです。SFAを活用すると、
- 顧客情報を一元管理(過去の商談履歴やニーズを可視化)
- 案件数や進捗状況をリアルタイムで把握
- 受注率や商談フェーズごとのデータを蓄積・分析
- 営業チーム全体で情報を共有し、適切なアクションを取れる
といったメリットがあり、営業マネジメントを大幅に効率化できます。
特に、リアルタイムでの情報共有が可能になるため、マネージャーが迅速に適切な指示を出すことができ、
商談のボトルネック解消や、営業プロセスの最適化に役立ちます。
ツール定着のポイントはマネージャーのかかわり方
どんなに便利なツールでも、組織に定着しなければ意味がありません。
しかし、営業担当者の中には、以下のような心理的な抵抗を持つ人もいます。
自分のノウハウを他人に教えたくない(自分の優位性を確保したい)
ミスやトラブルを共有したくない(評価が下がることを恐れる)
こうした課題をクリアするには、マネージャーの適切な関与が不可欠です。
情報共有によるメリットを明確に伝える
→ データを蓄積することで、個人の負担を減らし、成果を出しやすくすることを理解してもらう
ツール活用のルールを明文化する
→ 「全員が情報を入力する」など、ルールを明確にして、公平性を担保する
営業活動の評価基準を明確にする
→ 個人の失敗を責めるのではなく、改善のためのデータとして活用することを伝える
マネージャーが積極的に関与し、安心して情報を共有できる環境を作ることで、
ツールを組織に定着させ、営業プロセスの効率化を実現できます。
営業プロセスの可視化を有効活用した企業の事例

ここでは、SFAを導入して営業プロセスを可視化し、課題を改善した成功事例を2つご紹介します。
営業プロセスの可視化による、戦略的な営業活動の実現
スマートソーシャル株式会社(2011年創業)では、以下のような課題を抱えていました。
- 営業プロセスが属人化し、業務の無駄を把握できない
- 営業戦略を設計するための状況把握や分析ができない
- 業務の可視化を試みるも、既存ツールの機能やコストが合わない
特に、顧客のニーズを把握しづらく、飛躍的な成長が望めないと感じていたといいます。
そこで、属人化を解消するために、業務そのものを見直し、営業管理ツールの導入を検討しました。
使いやすさとコストのバランスが取れた「GENIEE SFA/CRM」を採用しました。
導入後の成果
- 営業活動の無駄が明確になり、営業効率が大幅に向上
- 感覚に頼った営業から、数値データに基づく営業へとシフト
- 取引状況やトラブル、案件管理をスムーズに共有でき、営業の属人化を解消
これにより、「やらなくていいことを可視化し、戦略的な営業活動を実現できた」という声が寄せられています。
脱属人化対策による、営業生産性の向上
不動産業界では、以下のような課題が長年存在していました。
- レガシーシステムの弊害と部署間のデータ連携の問題
- 営業組織の属人化による、慢性的な人材不足
- 競争力の低下、収益減少、業界内シェアの縮小
特に、不動産業界はDX化の遅れが指摘されており、
従来のように人脈や足を使った営業スタイルが根強く残っています。
その結果、顧客情報や物件情報、施工管理データなどが属人化し、
営業チーム全体でのスムーズな情報共有が難しい状況でした。
さらに、人手不足や市場の低迷により、営業の生産性向上が急務となっていました。
そこで、「GENIEE SFA/CRM」を導入し、以下のような改善が実現しました。
導入後の成果
- 営業担当者は、案件のステータスやフェーズ管理がしやすくなり、営業効率が向上
- スマホアプリを活用することで、営業先のルートを自動表示し、外出先からも業務報告が可能に
- マネージャーは、各営業担当者の進捗を可視化でき、対応漏れや遅れを把握しやすくなった
- 経営層は、顧客情報をデジタルデータとして資産化し、経営戦略に活用できるようになった
さらに、チャネルごとの投資対効果を可視化できるため、
マーケティングの成果も数値で分析可能となり、集客活動の効率化にもつながりました。
SFAツールによるDX化が進むことで、営業の属人化を解消し、生産性向上を実現できた成功事例です。
さいごに
営業プロセスを見える化し、適切にマネジメントすることで、属人化しがちな営業活動を最適な形で標準化できます。
これはつまり、顧客に提供する価値を最大化し、長期的な信頼関係を構築することにつながります。
さらに、営業の属人化を解消することで、チーム全体の営業力が底上げされ、結果として営業パフォーマンスの向上や収益アップにも貢献します。
しかし、こうしたプロセスを手作業で管理するのは容易ではありません。
そのため、SFA(営業支援システム)などのツールを活用し、営業活動をデータに基づいて管理・改善していくことが重要です。
SFAを導入すれば、案件の進捗管理や商談履歴の共有がスムーズになり、より戦略的な営業活動が可能になります。
また、データの可視化によって、ボトルネックの発見や、成約率向上につながる具体的な施策も立てやすくなります。
「営業の見える化を進めたいが、どこから手をつければいいかわからない」という企業も多いのではないでしょうか?
その場合は、SFA導入支援や営業プロセスの最適化をサポートするサービスを活用し、自社に合った仕組みを構築するのも一つの方法です。
営業活動のDX化を進め、競争力を高める第一歩として、営業プロセスの見える化を検討してみてはいかがでしょうか。