「ペルソナってどういう意味?」と聞かれて、「ああ、ペルソナね」と流暢にその意味を解説することができるでしょうか。
多くの人が「ターゲット似た感じのやつ」だと説明していますが、その違いを分かっていないと、その先にあるカスタマージャーニーの設定もできず、マーケティング施策もカン頼りのものとなってしまいます。
今回は、ペルソナの基本的な知識からターゲットとの違い、そしてペルソナ作成の重要性と作成手順についてもご紹介します。
ペルソナの基礎知識
マーケティング業界で利用されている「ペルソナ」の言葉の意味を要約すると、「商品購入の典型的な架空の人物像」みたいな感じになります。
具体的には「25歳、独身男性、年収350万円、都内在住、通勤方法は電車、彼女持ち、使用デバイスはiPhone11とPCとiPad、趣味はフットサル…」などと、商品購入の典型的なタイプの人を、事細かに挙げたものがペルソナになります。
もうこの時点で「ターゲット」との違いが分りますが、冒頭でも説明した通りこの2つの言葉は、違う意味で利用されています。
ペルソナとターゲットの違い
ペルソナとターゲットの違いは、情報の詳細さにあります。
ターゲットであれば、人物像として設定するものは「年齢、性別、家族構成、居住地」などが一般的になります。
しかし、ペルソナでは上記のものに加えて「名前、学歴、職歴、年収、趣味、日課、勤務時間、所持しているデバイスとSNS」などより詳細に、ドン引きされるぐらいリアルを追求して設定します。
気持ち悪いぐらいにリアルを追求したペルソナは、マーケティングにおいて非常に大きな役割を果たします。
どういった場面で利用されるのか
ペルソナは、新たな商品・サービスの開発や既存の商品・サービスの改善、そのマーケティング戦略を組み立てる際など幅広く利用されています。
ペルソナは、ターゲットよりも詳細でリアルな人物の情報を設定する必要があるため、対象の人物の生活やどういった人物かがより鮮明に分かるようになり、具体的なアイデアが出やすくなります。
過剰なファンのように、その人物のすべてを知ることで、どのようにアプローチを行うのがベストか分かるようになります。(後述のようにただの過剰なファンでは妄想が入るため、対象人物の行動を気持ち悪いぐらい把握するような「犯罪者系のファン」に近いかもしれません)
また、商品やサービスの開発・改善、そしてそのマーケティング戦略を組み立てるときには複数の人がかかわることになります。
これらの人は、年齢から性別、生活環境まで様々な人がかかわることになりますが、これでは人物像を一致させることが難しくなるため、チームとして同じ方向に進んでいくことができなくなってしまいます。
そこで、ペルソナを作成することで、マーケティングにかかわる全員が同じ人物像にアプローチできるようになります。
では、人物像を詳細でリアリティのある情報にすることのメリットは、他に何があるのでしょうか。
ペルソナを作成することのメリット
ターゲットよりも詳細でリアリティのある情報を設定しなければいけないペルソナは、ターゲットを作成するよりも多くの労力がかかります。
しかし、現在の情報が溢れかえり、ニーズが煩雑化した社会では、ペルソナを作成することがどんどん重要になってきています。
この項目では、どのようなメリットがあってペルソナが作成・設定されているのかをご紹介します。
担当者全ての間で共通した人物像の形成が可能となる
サービス・商品の開発や、マーケティングには複数の人が関わることになりますが、ペルソナを作成せずに進めると、イメージしているターゲット像がそれぞれ異なることから認識のズレが起こり、何度も修正を余儀なくされることで、効率の低下に繋がってしまいます。
ペルソナを設定することでこのズレをなくし、全員が同じ方向に向かってプロジェクトを進めていくことができるようになります。
時間とコストの効率化
担当者間で共通の人物像が形成されることで、方針が固まり、無駄な確認などが減ります。
さらに、より具体的で効果的なアイデアだけが残ることになり、検討する時間が減ることから作業時間やそれにかかわるコストの削減が可能となります。
また、別の分野の担当者などに協力してもらう際にも、イメージを簡単に共有することができるようになります。
ユーザー視点で考えることができるようになる
「5.ペルソナの作成方法」の項目で詳しく解説しますが、ペルソナを作成する時には、様々な情報を分析・整理していきます。
これにより作成されたペルソナは、一人の理想的な顧客となり、この顧客のニーズを満たすサービスや商品こそが求められているサービス・商品ということになります。
このユーザー視点でプロジェクトを進めていくことで、企業自身のニーズではなく、ペルソナのニーズを満たすためにどういったサービス・商品が良いのか考える「ユーザーファーストな思考」を全員が持てるようになります。
ペルソナの作成方法
様々なメリットがあるペルソナですが、当然正しいペルソナの作成ができなければ、マーケティング戦略が見当違いの方向へ進んでしまうことになります。
ここではより良いペルソナを作成するための手順をご紹介します。
情報の収集
まずはあらかじめ考えられる「ターゲット」の情報を集めます。
ペルソナを設定しようと考えている多くの企業では、すでに新しい商品やサービス、マーケティング戦略などのためのターゲットが作られているかと思います。
そのため、まずはそのターゲットに対してインタビューやアンケートなどで情報を集めます。
この情報収集は多くの場合、ユーザーから行いますが、サービスや商品によっては社員や家族、友人など幅広くアンケートを取ることが必要となることもあります。
また、競合がいる場合などは、そのインターネットサイトなどにある口コミを集めることも一つの方法です。
集めた情報の整理と分析
ここが最も重要なポイントとなります。
集めた情報で必要な情報のみを残し、その中の共通点を探します。
場合によっては、年齢や性別、趣味などでグルーピングしてさらに深い共通点を探すこともあります。
これがうまくまとまるかどうかが成功の可否の大部分を握っています。
ペルソナの作成
すでに情報の分析と整理が終わっているため、これをもとにペルソナの作成にとりかかります。
この時に重要なことは、よりリアルな人物像を描くことです。
どういったことが趣味でそれを月に何回何時間やっているのか。
また、どんな企業に勤めていて会社に対してどのようなイメージを持っているのか。
家族との関係はどうなのかなど、リアルさを追求してペルソナを作成するようにしましょう。
また、自分たちが作ろうとしているサービスやマーケティング戦略によって必要な情報の漏れがないようにも注意しましょう。
ペルソナ作成の注意点
ペルソナを作成する際の注意点は主に3つあります。
一つ目は、ペルソナの中に思い込みや先入観などを組み込まないようにすることです。
ペルソナを構成するものの多くは数字で計れないものであるため、作成する人の先入観やこうあってほしいという願望を、知らない間に組み込んでしまう場合があります。
こういった要素は、理想的なペルソナの作成を阻害し、プロジェクトを見当違いの方向へ向かわせてしまう要因になります。
そのため、しっかりとアンケートや口コミなどの情報を集め、客観的にペルソナの作成をすることが必要になります。
二つ目は、ペルソナの情報をしっかりとまとめなければならないことです。
多くの人の情報を一人のペルソナに落とし込むことは非常に困難ですが、趣味が20個もある特殊なペルソナを有効活用できる企業は少ないはずです。
また、情報をしっかりとまとめず、いくつもある状態では方向性が定まらず、ペルソナの価値が低くなってしまいます。
こうならないためにも、簡単ではありませんが情報の取捨選択をきっちりとしましょう。
三つ目は、ペルソナは変化するものである、ということです。
マーケティング戦略などと同じように、時代の流れやユーザーの環境、そして自社の状況などによってペルソナは変化していきます。
これに対応するためにも、常にユーザーやその周りに注意し、ペルソナを最新のものにアップデートし続ける必要があります。
まとめ
今回はペルソナの基本的な意味や重要性、メリットと作成方法についてご紹介しました。
ニーズがどんどん多様化してきている現代において、具体的なニーズの把握を可能にするペルソナ設定の重要性は高まってきています。
新しいマーケティングプロジェクトやサービスの改善をする際には、よりよい戦略設計のためにペルソナの設定をしてみてはいかがでしょうか。
また、ペルソナを設定した後にはカスタマージャーニーを作成することで、より効果的な戦略設計が可能となります。