目次
- 1 営業力とは?
- 1.1 個人としての営業力
- 1.2 組織としての営業力
- 2 営業力を下げてしまう6つの原因
- 2.1 営業のゴールが定着していない
- 2.2 市場の分析ができていない
- 2.3 戦略の最適な設定とモニタリングができていない
- 2.4 チームとして営業力を活かせていない
- 2.5 アカウント営業を活用していない
- 2.6 社員が十分に育成されていない
- 3 営業生産性が高い企業の特徴とは?
- 3.1 営業プロセスが可視化されている
- 3.2 新規開拓営業の成功率が高い
- 3.3 組織全体で顧客との関係構築ができている
- 3.4 営業活動に無駄がなく、生産性が高い
- 4 営業力を強化する9つのポイント
- 4.1 営業を取り巻く環境を分析する
- 4.2 新しい営業スキルを獲得する
- 4.3 マーケティング思考を身につける
- 4.4 営業スキルの体系化を理解する
- 4.5 顧客と長期的な関係構築を意識して営業する
- 4.6 社内の情報共有を活発化する
- 4.7 数をこなし、営業方法を具体化させる
- 4.8 営業マンを自立させる指導方法を確立する
- 4.9 ノンコア業務を効率化する
- 5 営業力強化に使える4つのツール
- 5.1 SFAツール
- 5.2 CRMツール
- 5.3 BIツール
- 5.4 ナレッジマネジメントツール
- 6 強力な営業組織を作るためには、営業力の強化が鍵
売上を伸ばすためには、営業部門全体の営業力を強化することが不可欠です。
しかし、「営業力をどうやって伸ばせばいいのか……」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
営業力を強化する際、営業マン個人のスキルアップに注目しがちですが、それ以上に重要なのは、組織としての営業方針や体制の見直しです。
営業力を高めるためには、「顧客ニーズの把握」「業務効率の改善」「社内体制の整備」の3つのポイントを意識しましょう。
この記事では、営業力が低下する6つの原因を解説し、組織の営業力を強化するための9つのポイントや導入すべきツールについて紹介しています。
営業力とは?
個人としての営業力
個人としての営業力は、営業担当者それぞれの行動に基づいて発揮されるスキルです。顧客へのアプローチから、ニーズの発見、提案・交渉、クロージング、さらにはフォローアップに至るまで、全ての段階で重要です。新たな顧客を開拓する力や、紹介を受けた企業に対して自社の商品やサービスの必要性を感じさせる能力も欠かせません。
ニーズを見つけるためには、顧客の抱える事業上の問題を仮説として立て、聞く力や質問を通じてそれを明らかにしていく必要があります。その上で、問題解決のための提案力とプレゼンテーション力を駆使して、適切な解決策を提供します。さらに、受注を目指す段階では、価格や条件の交渉力を発揮し、迅速に成約へとつなげます。
最後に、販売が終わった後も、顧客の成功をサポートするアフターフォローを通じて、継続的な取引関係の維持や新規顧客の紹介を得ることで、営業活動をさらに広げていくことが求められます。
組織としての営業力
組織としての営業力は、営業チームや営業部門、営業拠点などの集団が一体となって発揮されるものです。商品やサービスによっては、チームで協力して1つの契約を取得する場合もあります。
また、個々の営業担当者の成長段階に合わせた適切な目標設定を行い、営業マネージャーが中心となってメンバー同士の「関係の質」を向上させ、それによって「思考の質」を高めます。そして、その思考を基に「行動の質」を向上させることで、持続的に目標を達成し、組織全体の売上を拡大していくことが可能です。
ただし、メンバー間で過度な競争を促すと、モチベーションの低下や離職の原因になるため、注意が必要です。競争ではなく、共に創り上げていく「共創」の状態をいかにして作り出すかが、営業マネージャーの手腕が問われる部分でもあります。メンバー全員の意識を高め、積極的に取り組ませることが求められる、営業組織のマネジメントが重要です。
営業力を下げてしまう6つの原因
営業のゴールが定着していない
市場の分析ができていない
営業生産性を高めるためには、限られたリソースをどのように最適に配分するかが非常に重要な要素となります。
担当する市場の特性を主観的に捉えるのではなく、客観的に分析し、その中で特に自社の提供する価値と高い親和性を持つ重点市場(セグメント)のニーズやビジネスの可能性を正確に把握する必要があります。これに基づき、顧客にとっての価値と自社のビジネスの中長期的な最適化を図ることが求められます。
戦略の最適な設定とモニタリングができていない
目標を達成することだけに集中する営業マネージャーを見かけることがありますが、それでは当然、目標を達成することはできません。
ビジョンの実現に向けて、自社の強みや特徴を最大限に活かし、競合他社よりも高い付加価値を持つ製品やサービスを継続的に提供するための営業戦略を立てることが重要です。この営業戦略の質によって、生産性は大きく変わります。
しかし、同業他社と戦略そのものに差異をつけるのが難しい時代になってきています。その場合、策定した戦略を徹底的に実行し、その進捗をモニタリングしながら、PDCAサイクルを迅速に回すことで、確実に目標を達成していくことが必要です。
チームとして営業力を活かせていない
営業組織は、つい結果にばかり注目しがちですが、結果だけを追いかけても期待した成果には結びつかないことは明らかです。自チームの営業活動におけるプロセスを見える化し、成果に直結する可能性が高い行動を迅速かつ確実に実行することで、限られた時間内で最大の成果を生み出すことが可能です。
優秀な営業担当者は、結果につながるプロセスを意識して行動しています。目標から逆算して次に取るべき行動を様々な情報から明確にし、プロセスを確実に進めるために必要な情報とその情報源を把握しています。さらに、案件ごとの状況を正確に見極め、最適な次の一手を導き出します。つまり、成果を上げるためには、プロセスのマネジメント力が重要となるのです。
アカウント営業を活用していない
チーム全体の顧客の中でも、特に重要な顧客は継続的な売上の基盤となるため、営業マネジャーが担当者に任せきりにすることはできません。営業チームにとって特に重要な顧客企業には、ビジネス上の課題を共有し、解決策を継続的に提案することで、顧客とのエンゲージメントを長期的に強化していく戦略的な営業が求められます。また、その顧客から発生する案件を確実に受注につなげるマネジメントも必要です。
顧客ごとの状況を重要な視点から分析し、具体的なシナリオに基づいて受注を勝ち取るための検討を、メンバーが自発的に行動することが理想的です。
社員が十分に育成されていない
営業組織を率いるマネージャーにとって、人材育成や部下の成長支援は非常に重要な業務です。
「人は自ら成長する力を持っている」という信念のもと、メンバーの中に眠っている可能性や、本人がまだ気づいていない適性や能力を引き出し、短期的な業績目標と長期的な人材育成を両立させることが求められます。また、メンバーの成長段階がそれぞれ異なるため、その成熟度を見極めつつ、業務サポートや内省支援、精神的サポートをバランスよく提供することで、効果的な人材育成につなげます。
営業生産性が高い企業の特徴とは?
営業力の強化を目指す際に、営業力の高い組織とはどのような組織を指すのでしょうか。自社の営業組織と比較することで、解決すべき課題を明確にしましょう。
営業プロセスが可視化されている
営業活動を通じて得られた顧客情報や効果的な営業手法が見える化されている状態です。組織内で営業情報がリアルタイムに蓄積・共有される仕組みが整っていれば、トップセールスに頼らず、営業組織全体で高い営業生産性を達成することが可能です。
新規開拓営業の成功率が高い
新規開拓の成功率が高い営業組織は、自社目線ではなく、常に顧客の視点に立ったヒアリングや提案を組織全体で行っています。特に新規開拓は担当者に依存しがちですが、マーケティングと連携した効果的な営業の成功パターンを構築することで、効率的に新規開拓ができる営業力の強い組織を作り上げることができます。
組織全体で顧客との関係構築ができている
顧客の要望や期待に応えるだけでなく、それを超えた価値提供や改善提案ができる営業チームを目指すことが理想です。そのためには、顧客情報の管理を営業担当者に任せるのではなく、営業ツールを活用し、ノウハウとして蓄積し組織全体で共有することが重要です。
組織全体で顧客との関係を構築できていれば、取引拡大が見込まれる顧客や、課題となっている重点市場へのアプローチなど、戦略的な営業活動を組織的に展開することが可能です。
営業活動に無駄がなく、生産性が高い
営業活動において、表面的な問題だけでなく、その背後にある根本的な原因を見極め、継続的に改善活動を行える組織こそが、営業力の高いチームと言えます。営業戦略が個々のメンバーにまで浸透し、各営業パーソンが自発的に営業活動を展開できることが重要です。
そのためには、営業戦略やSFA(セールス・フォース・オートメーション)などの仕組みを明確にし、プロセスを徹底的に浸透させ、営業活動をしっかりとマネジメントすることが不可欠です。
営業力を強化する9つのポイント
営業力を強化する際には、組織として個々の営業担当者の力を伸ばすことが重要です。ただし、ここで誤解してほしくないのは、優れた営業力を持つ人材に依存したり、営業力に優れた人材を採用することが解決策だという考えではないということです。
営業力を高めるためには、営業担当者一人ひとりのスキルを強化するという視点が非常に重要です。同時に、営業マネージャーを中心とした営業チーム全体のマネジメント力を強化することで、個々の営業担当者の力を伸ばすという考えも忘れてはなりません。どちらを強化するべきかという議論があるかもしれませんが、答えは「どちらか一方」ではなく、両方を同時に強化することが非常に大切です。組織全体としてメンバーが常に成長できる環境を整えるためには、「人材」「仕組み」「マネジメント」の三つの要素を一体となって強化していく必要があります。
営業を取り巻く環境を分析する
では、これからの営業力強化において、重要な課題は何でしょうか。かつては、コネクションや人脈の広さ、頻繁に足を運んで熱意を示すことが営業力とされていた時代もありました。その後、豊富な知識やスキル、そして粘り強く押し進める精神力が営業に求められる資質として注目されるようになりました。しかし、現代ではそれだけでは十分ではありません。
今や誰でも簡単に豊富な情報を手に入れ、必要な商品を世界中の市場からいつでも選ぶことができる時代です。したがって、顧客に「これが必要だ」と確信させる提案力や、「まさにこれだ」と感じさせる提案の質が求められるようになっています。
新しい営業スキルを獲得する
現代の営業では、単に商品やサービスの魅力を強調して売り込む手法ではなく、その商品やサービスが顧客企業にとってどれほど価値があり、どのような効果をもたらすかを理解してもらうことが重要です。
つまり、単なる商品の良さを伝えるだけでなく、その商品やサービスが顧客企業にとってどれだけ有益で、効果的であるかを理解してもらう必要があります。そのためには、顧客企業の現状の課題や将来的に発生しうるリスクや問題を分析し、それらの解決策として自社の商品やサービスがどのように役立つかを示すことが求められます。言い換えれば、未来の課題への対処法を提案するためのコンセプト力が必要です。今後の営業において、営業力を向上させるカギとなるのは、ビジネスに新しい意味を与えるコンセプト力(=思考力)だと言えるでしょう。
マーケティング思考を身につける
これまでの営業では、自社の商品やサービスをとにかく売ることが主な目的でした。相手のニーズに関わらず、売れれば良いという押し売り的な手法も少なくありませんでした。しかし、不況が続き、将来の見通しが不安定な時代に入る中で、企業のコスト意識が高まり、本当に必要だと感じるものや、将来的に価値があるものでなければ、購入されなくなってきています。
営業力を強化するためには、顧客が何を求めているのか、そして現代において何が必要とされているかを的確に把握するためのマーケティング的な思考を持つことが重要です。需要のない商品やサービスをどれだけ売ろうとしても、成果を上げることはできません。需要のある商品やサービスの開発や、それを必要としている企業を開拓することが、成功のカギとなります。
営業スキルの体系化を理解する
自社の商品やサービスを効果的に販売するために、必要な営業スキルをまず体系的に整理しましょう。例としては、顧客開拓力、ヒアリング力、提案力、交渉力、クロージング力、そしてアフターフォロー力などが挙げられます。これらのスキルは、それぞれが営業活動の異なる段階で重要な役割を果たし、総合的な成果につながります。
体系化とは、営業のどの場面でどのスキルが必要とされ、それがどのように発揮されるべきかを明確にし、誰もが理解しやすく学べるように示すことです。これにより、営業活動全体が整理され、スキルの向上が促進されます。さらに、個々の営業担当者間でスキルの差が生じないようにし、各社員の能力を引き上げるため、適切な評価基準と成長に向けた指針を提供するアセスメントの実施が重要です。これによって、各営業担当者が自身のスキルを客観的に把握し、着実に成長できる環境を整えることができます。
顧客と長期的な関係構築を意識して営業する
営業が目指すべきは、案件ごとに限定された関係性ではありません。個々の案件に集中してしまうと、その都度新たに関係を構築することになりがちです。もちろん、取引を重ねることで信頼が増し、関係が深まることもありますが、重要な顧客との関係はもっと長期的な視野で築かれるべきです。
顧客の事業課題に対しては、長期的な提案が必要です。たとえ短期的な製品やサービスの導入であっても、顧客の事業課題が変化するたびに、それに対応した提案を行うことで、結果として長期的な関係の構築へとつながります。
社内の情報共有を活発化する
営業所でよく見られる営業力強化の障害として、情報の囲い込みや独占が挙げられます。自分の成果を上げるために、他の人に情報を教えない、役立つスキルを共有しないなど、組織内で競争意識が強くなり、営業力を向上させるための情報が共有されていないのです。
企業情報やマーケティングデータ、商談や契約を獲得するためのノウハウなどは、積極的に共有されるべきです。情報を共有することで、知識やスキル、ノウハウの共有が促進され、それが営業力の向上に直結します。このためには、情報を発信するというメンバーの意識「人」、どのタイミングでどの情報を共有するかという「しくみ」、そしてその情報の質を高める「マネジメント」の三位一体で、効果的に機能させることが必要です。
数をこなし、営業方法を具体化させる
いかにスキルを体系化して、情報共有を図ろうとしても、個々の営業が行動に移さないのでは意味がありません。
行動の絶対数を増やし、具体化させることがとても重要です。
そのために意識の変化をもたらすことのほか、指導法を見直すことも大切です。
営業マンを自立させる指導方法を確立する
営業マネージャーがプレイングマネージャーとして業務をこなす企業は多く、営業担当者を採用した後に十分な育成を行わずに放置し、成績が上がらなければ退職させて新しい人材を採用するという悪循環に陥る組織も依然として存在します。
一方で、営業マネージャーが過度にフォローしすぎることで、営業担当者が自分自身で成長する機会を失い、なかなか成果を出せないケースも見られます。重要な商談をマネージャーや先輩が代行してしまうことはありませんか?その結果、担当者自身も困ったときには上司が助けてくれると期待し、自ら積極的に契約を取ろうとしなくなります。
重要なのは、すべてのプロセスを担当者に経験させ、失敗から学ばせながら成功体験を積ませることです。これにより、営業担当者が自らの力で契約を獲得できるようになる、自立した指導方法を確立することが必要です。
ノンコア業務を効率化する
営業活動におけるノンコア業務は積極的に削減し、社内リソースを効率的に活用していきましょう。
ノンコア業務に多くの時間を費やしてしまい、顧客とのコミュニケーションや営業スキルの向上に集中できないのは本末転倒です。
以下の業務にかかる時間は、ツールや営業代行会社を活用することで削減が可能です。
提案書・見積書の作成
報告書・日報の作成
営業リストの作成
社内会議への参加
営業力強化に使える4つのツール
SFAツール
SFAツールとは、営業支援システムのことで、営業業務を効率化するためのツールです。
このツールを使えば、営業担当ごとの日報作成、スケジュール管理、行動管理、顧客管理などを1つのプラットフォームで行うことが可能です。
SFAを導入することで、営業活動の報告にかかる時間を短縮できるほか、案件の対応状況をリアルタイムで共有することができます。
CRMツール
CRMツールとは、顧客情報を収集・分析し、顧客ごとに最適なアプローチを提案してくれるツールです。
顧客情報を入力するだけで、顧客の分析を行い、その属性に応じた最適なアプローチ方法を提示してくれます。
営業現場で活用すれば、CRMによって顧客情報が一元化され、情報共有がしやすくなります。また、顧客分析も自動で行われ、顧客が興味を持ちやすいアプローチ方法を提案してくれるため、営業活動を効率化できます。
BIツール
BI(Business Intelligence)ツールとは、営業に関連するデータを分析し、売上予測や顧客ごとの利益率を計算し、それに基づいた資料をワンクリックで作成できるツールです。
経営に必要な数値分析を自動で行えるだけでなく、資料作成も手軽にできるため、業務の効率化にも大いに役立ちます。
ナレッジマネジメントツール
ナレッジマネジメントツールとは、担当者が持っている知識や経験といった独自のノウハウを収集、整理し、活用できるツールです。
ツールによって機能は異なりますが、ナレッジの検索、顧客管理、参加者同士のコミュニケーション機能などがあり、ノウハウの収集・整理・活用機能は標準的に備わっています。
強力な営業組織を作るためには、営業力の強化が鍵
営業力が高い組織とは、営業活動における能力、仕組み、マネジメントが高い生産性で機能している組織を指します。そのためには、営業組織が目指すべき方向性として、営業戦略やターゲットの明確化が重要であり、プロセスの標準化と適切なマネジメントも不可欠です。また、営業パーソン一人ひとりのスキル向上や組織文化の改善も重要な要素です。
自社の営業組織の課題を整理し、営業力を強化するための施策に取り組んでみましょう。